947:つづき[saga]
2012/06/15(金) 18:59:25.07 ID:q6BXC4Nxo
「手紙、読みました?」
「ああ」
返事はいつものように平坦だった。佳代子はそんな夫に苦笑して、彼の前にご飯を盛った器を出した。
ロボット、というのは言い得て妙かもしれない。この人はそういう性質がある。
「読んでどう思われました?」
「別に」
やはり特に感慨もなさそうな声だ。ただ、手の中には大きい本がある。いや、アルバムだ。
「あらかわいい」
覗きこんで佳代子は笑った。幼いころの娘の姿がそこにあった。無邪気に笑って父親の腕の中にいる。
当の父親はむっつりと口を一文字に結んでいる。
「こんな小さかった子が、もう結婚ですか」
夫は写真の中と同じように口を結んでいた。
いや、微妙に違う。震えるその口元を見ながら、微笑して彼女は夫に背を向けた。
「早く食べてしまってくださいね。冷めちゃいますから」
鼻をすする音が、静かに食卓に流れた。
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