15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 19:43:48.03 ID:IClwZiHj0
はてさて、お分かり頂けたとは思うだろうが、それとも読み飛ばされただろうか。悪の秘密結社と言って俺が連れてこられたのはどこにでも有る二十四時間ファミレスである。
最近の流行か知らんが喫茶店を拠点にする正義の味方は聞いた事が有っても、流石にファミレスに寄生する悪役ってのは前代未聞だ。
少しづつではあるが、もしかしたらそんなにシリアスな話でもないのかもなと思えてきた。
そんな俺の醸し出す気だるい空気など最初っから、存在すらも無かった事にしてしまいかねない勢いでいーさんと狐面の男のやり取りは続く。
「回りくどいのは昔と違って嫌いなんですよ。哀川さんの影響でしょうね。今のぼくはどちらかと言うとやり込みプレイよりも早解きに主軸を置いていまして」
「製作者に敬意を払わないその態度はお前的には良いのかよ、ああん?」
「与えられた枠内で何をやろうとそれはプレイヤの自由でしょう。あ、崩子ちゃんさっきからデザートメニューをずっと見てるけど好きなのが有ったら頼んで良いからね?」
「うー……そうは言われましてもお兄ちゃん。これなんて六百三十円もするんですよ? これは私の一日分の食費に相当します。崩子は水で十分です。……お水は、無料ですよね?」
「フン、『与えられた枠内で何をやろうとプレイヤの自由でしょう』か。与えられた枠内で満足出来るような人間では俺もお前も有るまい。違うか、戯言遣い? 闇口のお嬢ちゃん、なんでも好きなものを頼むといいぜ。少しでもいいから"いーちゃん"に経済的打撃を与えてやれ」
「生憎ですが、ウチの財政は六百三十円くらいで傾いたりしませんよ」
「塵も積もればという言葉を知らんとはな。戯言ばかりが専門で格言は埒外か」
「いえ、私はお水で……」
……オイ、こいつらは一体何の話をしてるんだ? ゲームとか六百三十円とか……ハルヒの話はどこへいった?
「はい、ご注文のマロンパフェ、お待たせしましたー」
通路側、俺の後方からそんな声がして振り向く。
赤。
そこには真っ赤な、本来ならばそこは白いレースで仕立ててくるモンだろうと思われる部品まで赤く染めた、髪まで真っ赤なウェイトレスが居た。
「え? 私そんなの頼んでませんよ、お兄ちゃん!? マロンパフェって……それ八百二十円もするじゃないですか!? ごめんなさい、ウェイトレスさん、これ提げて下さ……!?」
「そんな事を言われましても、これはいーちゃんの奢りですから、ちゃんと食べて下さいね。と……猫撫で声はこれくらいでいいよなあ」
「フン、ようやく来たか」
「哀川さん!?」
いーさんが驚愕の叫びを上げる。深夜のファミレスだから客は俺たち以外にいないけど、しかし叫び声をあげていい場所では、ファミレスはないと俺は思う。
「おい、クソ親父。アホ戯言遣い。お前ら揃って何を下らねえ話をしていやがるんだ。それとな、いーちゃん。アタシの事を苗字で呼ぶのは……いや、今回に限って言えば敵同士だったな」
ニヤリと。野生の肉食獣を思わせる捕食者の目で、その赤い彼女は俺といーさんに笑いかけた。
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