25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:25:43.43 ID:IClwZiHj0
「えーっと、ああーっと……オデットさんや?」
とにもかくにも話し合いを試みる俺。そうだ、きちんと向かい合って話し合わないからお互いを理解出来ずに戦争が始まってしまうのだろう。であるならば、言葉が通じる以上無用な血を流す必要なんてどこにも無いんだ。そうだろ?
人間関係は信頼関係。きっと電波さんとだって分かり合えなくとも共存の道は有るはずさ、どこかに。
……どこかとは言ったものの窓やらに柵の付けられた病院しか想像出来はしないのだが。
「嫌ですわ、姉さま。さん付けだなんて。いつものようにオデット、と。そうお呼び下さい」
ね? と可愛らしく微笑みながら念を押す。ああ、左手に刃物さえ持っていなきゃコロっといっちまいそうないーい笑顔なんだけどな、チクショー。
「あー、そんじゃ、えっと……オデット?」
「はい、なんでしょうイリア姉さま!」
……名前を間違えられるのはともかくとして性別まで無視とか、この子の眼はガラス球か何かで出来てんのか?
「なんでも仰って下さい、姉さま。オデットは姉さまに尽くす事こそ至上の喜びです。オデットは姉さまのためにこそ生きているのですから!」
何食ってたらこんな歪んだ性格になるのだろうか。ちょっと親の顔とお抱え料理人の顔を見てみたい気もする。
「その左手に持っている刃物をとりあえず捨てないか?」
「……え?」
女性の顔から一瞬にして笑顔が消え、能面のような無表情がそこに現れる。真っ白な肌の色も合わさって、その様からは生気がまるで伝わってこない。幽霊のような、という比喩がとてもぴったりとそこにあてはまった。
「姉さま……どうしてですか? どうしてオデットを傷付けるのですか? オデットは痛いのです。痛いのです。オデットは泣いているのです。見えませんか、イリア姉さま? 愛しているのです、イリア姉さま」
女性の首がガタガタと、発条仕掛けの人形のように動く。横顔は、それこそヨーロッパ辺りの絵画のように非の付け所の無い造詣をしていたが、残念ながら彼女が美人であればあるほど状況はホラーでしかないのであるからして。
「姉さま、どうかオデットに切り刻ませて下さいませ。私は見たいのです。姉さまの体が真っ赤に染まればそれはそれは美しいと私は何度も夢に見るのです。ですから、どうか。お願いですイリア姉さま」
お願いされたって無理なものは無理なのだが。生まれが良いとお願いすれば何でも許容して貰えるものなのだろうか。
いや……流石に死んで下さいって言われて首を縦に振るヤツはいないだろうなあ。
「そんなん頼まれたって無理だろ、無理。考えるまでもないとは思わんかね、オデットさ……オデット」
「私は姉さまに同じ事を願われて了承致しましたでしょう?」
うえ、マジかよ。つか、オッケー出してんじゃねえし、そもそもそんな事をお願いしたそのイリア姉さまとやらもどんな頭の構造してやがるんだ?
姉が姉なら、妹も妹って事だろうか。
「だから……姉さま」
純白のウェディングドレスが狭い路地に翻る。その不思議な光景に一瞬見蕩れてしまい、そのせいで反応が遅れた。しまったと思った時にはもう遅い。瞬く間に六メートルは有ったはずの俺との距離を詰めた美女は、その握る剣の切っ先を俺の胸に押し付ける。
ぷつり、服が裂ける音が聞こえた気がした。
「一緒に、真っ赤になりましょう?」
殺人鬼の口から漏れたその声は、とても甘い、甘ったるい響きを含んでいた。
まるで愛する恋人にベッドの中で睦言を囁くような。
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