過去ログ - キョン「戯言だけどな」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:55:00.23 ID:IClwZiHj0
「ええ。非常識極まりありません。ちなみにこうやって貴方に種明かしをしている僕ではありますが、その道のプロではないので正直貴方と逸れないようにするのが精一杯なんですよ、これでも」

そうかい。そりゃ……って、おい、ちょっと待て古泉!?

「気付きましたか。僕たちは危機から逃れたつもりでいて実はまだ敵の術中、その只中に居るのです」

一難去ってまた一難は時間の問題と来たモンだ。いい加減にして家に帰しては貰えんだろうか。俺のウキウキ年越し一人っきりハッスルしてやるぜ計画をなんでこんな形で裏切られにゃならんのだ。

「ですが、ご安心下さい。僕が居る限りは貴方と朝比奈さんには……おっと」

古泉の出した左手が俺の歩みを制する。なんだなんだ。また何か出やがるってのか、コンチクショウ。出るなら出てこい。でも、出なかったら出ないでくれても構わない。いや、むしろ出ないでくれ。

「後ろに下がって下さい。敵との間に必ず僕を挟むように動いて貰えたら、非常にやり易いのでよろしく」

「オーケー」

朝比奈さんを背負ったままにムーンウォーク。なんだか厄介事を全部古泉に押しつけちまってるようで気分は悪いが、仕方ない。あんな人外魔境を相手にして俺なんかが何を出来るのかって言ったら両手を上げて壁を向く事くらいしか残ってないしな。

「……そこの角に潜んでいるのは分かっています。どうかお顔を拝見出来ませんか?」

優しげな響きさえ持った超能力少年の求めに応じて、道の影から一人の男が姿を現す。
まるで、舞台劇でライトアップされた役者のような、しかしどこにでも居そうな取り立てて特徴の無い、しかししかしソイツが纏っている雰囲気だけは役者、それも主演役者のような。
視界に浮かび上がって見えるとでも表現すればいいのだろうか。俺にはちょっとその男を形容する言葉が出て来ない。
それでも。
それでもあえて足りない語彙で表現するとしたら。
位置外。
そこに居てはならない。
世界にそんな人間が存在していてはいけない。
なぜか、そんな感情をこちらに抱かせる、ソイツはそんな男だった……って、アレ?
この説明文、今日二度目じゃね?

「やあ、奇遇だね。……いや、戯言だったかな。木の実さんの仕業だろうから必然と考えた方がいい」

「いーさん!」

朝比奈さんを背負っている為、走り寄る事こそ出来なかったが俺は心の底から安堵していた。去年の十二月、光陽園高校の前でハルヒを見つけた時のような心持ちだったと言えば俺がどれだけ心細かったか、どれだけこの再会に安心したかがお分かりいただけると思う。

「おや、無事だったかい。それは十全。人数も増えているみたいだし、流石は『鍵』と言ったところかな。ぼくが心配するまでも無かったみたいだ」

カツカツと歩み寄る戯言遣いに対して、しかし警戒を解いていないヤツが一人。古泉だ。そういやまだいーさんの事を説明していなかったな。

「……この方は?」

抜け目無く、いーさんからは死角に置いてある左手に拳銃を忍ばせながら副団長が問いかけてきた。俺はいまだかつてこんなに血生臭い展開には幸運にも出会った事がないので、そこに違和感を覚えちまう。
が、状況を考えればきっと古泉の対応は間違いではないのだろう。

「人に名前を尋ねる時は先ずは自分の名前を名乗るのが筋ではないのかい、古泉一樹くん。玖渚機関、弐栞所属の鬼札。ブラフイズブラインド。一番の切り札がブラフとは悪くないジョークだとぼくも思うよ」

一歩、また一歩と踏み出す戯言遣いと後ろ手で拳銃のトリガに指を掛ける古泉。場に緊迫した空気が流れるも、いーさんはどこ吹く風で歩みを止めない。

「……名前を知っている方相手に、自己紹介は時間の無駄でしかないでしょう」

「お、おい、古泉」

「貴方は黙っていて下さい」

ぴしゃり叱咤される。その男が味方である事を告げるタイミングが、ああ、切り出せる空気じゃねえ。

「君こそ黙るんだ、古泉一樹」

「なっ!?」

「弐栞は玖渚友に絶対服従しろ」

いーさんがそう言った、次の瞬間古泉が片膝立ちで頭を垂れた。まるで、ここが中世ヨーロッパで王の前に出た騎士のように。

「イエス、マイロード」

騎士、そのままに。


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