38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:09:47.03 ID:IClwZiHj0
「……ふう」
想影真心(後)が出て来てから一言も喋らなかった想影真心(先)が口を開いて最初に出たのは溜息だった。
「まったく、そういう事だったのですね。人が悪いですわ、お友達(ディアフレンド)。最初から分かっていたのでしょう? こちらとしては真心に連絡が付かなかったからの苦肉の策だったのですけれど、はあ、まったくこんなものは十全ではありません」
その口から出てきた声は、先ほどとは打って変わっての美声。まるで歌うように想影真心(?)は続ける。
「いいでしょう。ここからでも挽回出来ない訳ではありません。それに……悪い子を躾けるのは母親の役目ですね。まったく、哀川潤も大変な子守をわたくしに押しつけたと思いません、お友達?」
「いいえ。一度引き受けた事を後から云々言うのは貴女らしくありません。そういう甘ったれた事を安易に言うのはやめたらいかがですか。みっともないでしょう、小唄さん?」
小唄、と呼ばれて想影真心(先)が顎の辺りを引っ張って皮膚をむしり取……アレ、見た事有るぞ、俺。ルパン三世がよくやる変装ってヤツじゃねえ? そうそう。あんな感じで顔の上に被ってた特殊メイクじみた顔をはぎ取って中から……中から出て来たのは眼鏡美人。
……いや、なんで眼鏡がマスクの下から出てくるんだよ。物理的に有り得ないだろ、それ。
「……戯言ですわね、お友達。屈辱ですわ」
三つ編みは変わらずだが、その色はアメジストを彷彿とさせる深い紫。その頭にハンチング帽を載せて彼女は、俺に、向き直る。
「初めましてですわね。自己紹介をさせて頂きますわ」
いつの間に着替えたのか。全身を動きやすそうなデニム地の服で覆い、足元は編上げの洒落た登山靴。恐らく、これが彼女の本来のファッションなのだろう。その格好は勝気そうな美女の強い意志を湛えた眼によく似合っていた。
「わたくしは石丸小唄。人呼んで『大泥棒』。お察しの通り十三銃士の、その第五席ですわ。よろしくお見知りおきを、私の敵(ディアエネミイ)」
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