68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/20(木) 20:53:16.29 ID:l1nLUIO70
石丸小唄と想影真心の間にどんな因縁が有るのか俺は知らないが、しかしそれでも石丸さんが想影さんをどんな眼で見ていたかは俺だって気付いてる。あれは母親の眼だった。慈悲深い、子供の駄々に嫌々ながら、好き好んで付き合う人の眼を彼女はしていた。
それを戯言遣いは分かっていたんだ。薄情だったらそんな事には気付けない。無感情だったら他人の想いなんて分からない。
他人の感情さえも見透かして、戯言を弄し、状況を自分の思い通りに持っていく。それは「関係製作技術」とでも名付けるべき能力で、それこそが戯言遣いの遣う「戯言」とやらなんだろう。
「……だったら。だったら、俺たちはこれからどうすれば良いんだよ。なあ、教えてくれよ戯言遣い。どうすれば俺はハルヒを助けられる?」
俺の問い掛けに少し、戯言遣いは顔を上げた。背の低い彼の視線は俺の顔に集中して、俺もそれを見つめ返すようになっちまう。
「君」
「ん?」
「君、戯言遣いの素質が有るよ」
それだけを言っていーさんは歩みを再開する。は? 戯言遣い? 俺が? 何言ってやがるんだ、あの人は。
これも戯言か?
その言葉の意味を考えようと立ち止まった俺を追い抜く形で古泉がいーさんの後に続く。すれ違い様に、ソイツは言った。
「褒められているんですよ。その才能を」
才能だって? 俺にそんなモン有る訳ないだろうが。自慢じゃないがその辺、どこにでも居る一般男子高校生だぞ、俺は。比較しても変わるのは模試の成績くらいで、それこそ有象無象を相手取れるような器じゃない事は俺が一番良く分かってる。
……いや、一つだけ誰とも比べらんないものは俺にも有るか。
宇宙人、未来人、超能力者、異世界人。
そして……涼宮ハルヒ。
ソイツらを相手にしてきたのは、その経験だけはきっと他の誰にも無い俺だけのオリジナル。勿論、SOS団の面々を有象無象なんて思っちゃいないさ。けれど、俺にはそれしか他と違うものは有りはしない事にも、気付いた。
才能。
武器。
俺だけの、戦い方。
そういうモンがもしも有るのなら。俺はソイツでハルヒを、助けたい。SOS団を守りたい。
君の力も貸して貰う事になる。そう、戯言遣いは言っていた。
そんなのが俺に、有るのだろうか。
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