15: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:27:26.65 ID:ltIw3edqo
生徒会室はいよいよもって冷え切って、山中教諭は肩を摩っていた。
全く、夏に寒い思いをしなきゃならないなんて、馬鹿馬鹿しい。
「和ちゃあん……クーラー切りましょうよお」
山中教諭はクーラーを睨んで、また批難がましく言った。
生徒会長は、困ったように笑った。
「でも……切ったら暑くなりますよ」
山中教諭は口を開いて、そして何も言わずに閉じた。
暑いなら暑いで、いいじゃないの。
そう、私が言ってもいいのだろうか。
そんなふうに考えてみると、今、少なくとも子供でない自分には、そんなことを言う資格はないような気がして、教諭は少し悔しくなった。
彼女たちなら……軽音楽部の子たちなら、言えるだろうか。
言えるだろうけど、言わないだろうな。
「の……」
教諭が声をかけると、目にかかった前髪を払って、生徒会長は微笑んだ。
山中教諭はそれを見て、なんだか無性に悲しくなった。
かたや、海ではしゃぎ回ろうとする女の子たちがいるのに、こんな風にやけに涼しい部屋で、字のぎっしり詰まったプリントとにらめっこする子がいるなんて。
「……和ちゃん、お茶頂戴」
生徒会長は、夏季休業中だというのに生徒会室に入り浸る教諭を疎んだりはしない。
けれど、教諭は、さわ子は少しだけ、軽音楽部の子たちのようになってみたかった。
それなのに、生徒会長はそれをさせてくれない。
生徒会長は冷えた麦茶を、氷の入ったグラスに注いで、軽く揺らした。
かん、と氷とガラスがぶつかって、高い音を立てた。
部屋が一層冷えた気がした。
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