17: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:30:05.62 ID:ltIw3edqo
窓の外には空があった、雲があった、鳥もいたし、緑もあった。
けれど、冷房で冷やされたガラス窓が、そんな夏の暖かさを完全に遮断していて、さわ子はその明媚な光景を見ても何も感じることが出来なかった。
何かを感じたいとは思っていた。
「……キャッチボールだ」
さわ子は呟くように言った。
生徒会長は窓の外を見た。
生徒会長は、空を見上げては飛行機雲に焦点を合わせ、木を見てはその傍に立てられた、木の名前の書かれたプレートに目を凝らした。
「そうですね」
ビルや、道路や、道行く人を見てから、ようやく彼女はグラウンドの真ん中で、二人の少女がボールを投げ合っているのに気がついた。
少女たちが汗だくなのに気がついて、生徒会長は少し眉を潜めた。
「暑くないんでしょうか」
少し批難がましい口調で言う生徒会長を見て、さわ子は立ち上がり、窓ガラスに手を当てた。
冷たい。不自然なくらいに冷たい。
「でも、ほら、和ちゃん、楽しそうよ」
「そうですね……片方、随分と手を抜いて投げてる感じがしますけど」
生徒会長は頬杖を突いて、つまらなそうに少女たちを見つめていた。
さわ子は、ちらと生徒会長を見て、また、窓ガラス越しに少女たちを見つめる。
「……楽しそうよ、やっぱり」
窓ガラスは冷たい。
まだ夏で、これから秋が来て、冬がくるのに、もうこんなにこの部屋は冷たい。
少し、急ぎすぎていやしないか。
「まあ、そうかもしれませんね」
そっけない生徒会長の口調に、さわ子は寂しそうに笑って、窓ガラスを、一気に開けた。
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