過去ログ - 澪「合宿をします!」
1- 20
20: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:34:09.31 ID:ltIw3edqo

和は見た。
さわ子の細い、長い腕が、質量はそのままに体積だけ大きくなった、薄い柔らかい夏の空気を纏って、しなった。
ふっ、と高い音がなった。ぱん、と綺麗な音が響いた。
ボールは相手の胸元に真っ直ぐに届いた。

和は聞いた。
さわ子が、小さくガッツポーズをして、小声で呟いていた。

「やった!」

和は見た。
さわ子の長い髪の間に見える額には、一滴の汗が浮かんでいた。
強すぎる太陽の光を、ぎらぎらと反射させていた。

「あ……」

和は聞いた。
自分の声と、高い電子音を。
クーラーの断末魔、熱気の勝鬨、僅かな間だけ、誰もが子供に戻れる、暑い夏の日の始まりを、聞いた。

和は感じた。
自分の右手は知らぬ間に冷房のリモコンに伸び、その電源を切っていた。
腕に浮いた汗は我先に蒸発し、和の体温を下げようとしていた。

それでも、さがらない。

「和ちゃん……やっぱり、楽しいわよ?」

さわ子が小さく首をかしげた。
そのまま、言葉をさがすように窓の外へ目を遣った。

和は見た。
まだ少しだけ形を残している飛行機雲が溶け出していく先には、真っ青でだだ広い空があった。
木には蝉が、青葉が、そしてもしかしたら、眼に見えないほど小さい何かが、地中にいる何かが、一生懸命に夏を謳歌していた。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
103Res/68.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice