5: ◆RLqqTM6o/csr[sage]
2011/01/23(日) 17:13:04.89 ID:ltIw3edqo
「なにやってるの?」
「日向ぼっこ」
ふうん、と返事をして、憂は冷蔵庫から麦茶を取り出して、氷を入れたグラスにそれを注いだ。
すぐにグラスは白く曇る。
暑いところと、寒いところの壁、薄いガラス一枚のその壁を憂は確かにその手に感じていた。
「憂、憂のお姉さんは、今日はいないみたいだね?」
憂は相変わらず笑顔のまま、純のいる窓際まで歩いていき、正座をして床に盆をおいた。
盆にはストローが顔をのぞかせているグラスと、ただ、冷たい麦茶だけが入っているグラスが載っていた。
「うん、なんか今度の合宿の準備するんだって。梓ちゃんが新しく入部してくれたから、凄く楽しみにしてたよ」
へえ、と気のない返事をして、純は首だけ持ち上げてストローに口をつけて、麦茶を吸い込んだ。
憂は彼女が、姉がリビングのテーブルにおいていた漫画を読んでいるのに気づいた。
純は憂の目線に気づいて、へらっと笑った。
「この漫画も合宿シーンだよ。果たして、彼らはあの強豪男子高校エースの魔球を打ち破ることが出来るのだろうか――」
純は寝転んだまま、大げさに腕を天井に向けて、ゆらゆらと振った。
憂はその様子をじっと不思議そうに見つめていた。
外の熱気をまとったままの彼女の腕が、一生懸命に部屋の空気をかき回しているようだ。
「なあんて、あっついよね、憧れるよ、合宿」
そう言ってため息をつき、純は腕を下ろした。
その腕が床についたとき、彼女は小さく悲鳴を上げた。
「冷たっ」
憂はなんとなく、掌をフローリングに当ててみた。
冷たい、だろうか。正座をしているから足に広く接しているはずの床も、彼女には冷たく感じられない。
少しずつ、少しずつ、クーラーは彼女を冷やしていったのだ。
憂は少し寂寥を込めた目で、純を、そして窓の外を見た。
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