過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」
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851: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/03/06(日) 22:10:08.99 ID:eJSstRhK0




自分の背後のリビングで、そのような、ある意味おめでたいお祭り騒ぎが行われているとも知らずに、一方通行は冷蔵庫を再び開けると食材をチェックして行く作業に戻っていた。

浸け込んでおいたスズキがそろそろ味が染みているだろう。

美琴から何本か貰ったワインがあったからそれを開けるのもいい。

美琴は赤派だ。白ならば一本や二本開けても文句は言わないだろう。

ベーコンが痛まないウチにカリカリに焼いてサラダの上に乗せてしまおうか。

想と美琴の朝食ように新しいベーコンは買っておいてある。

夕食の段取りを頭に浮かべながら、一方通行はエプロンを身に着けると、ポケットから煙草を取り出す。

昼間は久しぶりにジャンクフードを食べた。
だからだろうか、何となく煙草が吸いたくなるのは。
キッチンの換気扇は一方通行が足を踏み入れた時からオートで作動している。
それを、ちらりと確認すると、一本取り出し火を点ける。

想の面倒を見るようになってから、極端に外食が減った。正確にはジャンクフードの類を食べる機会が減った。
たまに食べたくなることもあるが、基本的に一人で食べる事が少なくなっているここ数年、一人で外食やらコンビニ弁当を食べるということは無い。
それは、佐天から子供の頃から外食、それもファーストフードばかり行くと味覚が馬鹿になるという事実を脅しと誇張を交えて聞かされたことも要因になっているのかもしれない。
打ち止めと一緒に住んでいた頃は、食事など作らず、もっぱらファミレスかコンビニで済ませていた。
その上当時中学生になったばかりの打ち止めが友人とハンバーガーを食べに行くという話を聞いていたせいもあって、随分と彼女の味覚について気を揉んだものだ。
結局ヘルシー且バランス志向の黄泉川の炊飯器料理のおかげもあってか、打ち止めの味覚に特に障害など無く胸を撫で下ろした。
しかし、あの当時の何とも心の置き所の無い不安を思い出すと、おいそれと想を連れて行く気にはならない。
それにつられるようにして、一方通行自身も自然と外食が減ったのだった。

(想っていや…アイツ……普段からハンバーガーだとかそンなもンしか食べてねェわけじゃねェだろォな)

想の方は大丈夫だとして、母親の方が問題だ。
一つの事に打ち込むと周りが見えなくなる。
その他がすべておざなりになるのだ。それはもう、物の見事に。
夢でもあり、目標でもあり、そして使命でもある研究。それに打ち込む余り美琴は他の同世代の女達に比べ様々なものを省いてしまっている。
勿論、無理に経験する必要の無いも省いている。頭の悪い火遊びにうつつを抜かすだとか、けばいばかりの無個性な流行のブランドに身を固めるなどということをする必要はない。
しかし、同じように、年相応の愉しみも擲っているのではないだろうか。
小ざっぱりした服装と、してるかしていないかのメイク。
それでも、天然素材の美しさ故か、美琴からは健康的な色気と爽やかさすら醸し出されているのだが、もう少し自分のことを構っても良いとも思う。
日々の愉しみが研究と娘だけというのも、23歳の若い女として寂し過ぎやしないだろうか。

(まァ、俺が口を出すこっちゃねェ話なンだろォけどな……)

それでも気に掛かってしまうのは、背負うと決めているから。
そして、それ以上に重ねてきた月日と、それに比例する感情がある。
換気扇に吸い込まれていく紫煙を目で追いながら巡らせていた思考を切り上げる。
幾ら考えてもコレは自分が答えを出せる話ではない。
一方通行は半分程吸った二本目になる煙草を灰皿に捻り込む。


「さてと、さっさと作らねェとセンセイがウルセェな」




                      ◇




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