過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」
1- 20
946:彼女がぱっつんになった理由[saga]
2011/03/10(木) 21:53:46.74 ID:URvLCU7D0

「ッたく…」

掴んでいた頬を解放してやると、疲れきったように溜息を吐く。
頭が良い癖に馬鹿というか、未来をきっちりと見据えているくせに向こう見ずというか、頭をがしがしと搔く。
基本骨子は中学生の頃と替わっていない一児の母に、この数年で一体何度溜息を吐いただろうか。


「……んとね…」


しょんぼりとしたまま美琴は一方通行の袖を摘んだままぽつりと話し始める。


「よくあるじゃない。『8歳まではお母さんが床屋さん』っていうの。それにずっと憧れててね…それで、今日シザー買ってきてね…」
「お前は本当に形から入る奴だよな」
「それでいざ切ろうってなって…勿論、素人だからちょっと長さを揃えてあげようかなって、その程度のつもりだったのよ?前髪長くなってきてたみたいだし、目悪くなっちゃうでしょ?
 そうしたらさ、髪の毛がくっ付いちゃって。ホラ、私静電気とか持ってるじゃない?それで、予想外に…その……ザックリ……」
「美ィィィ琴ちゃァァァァンン?テメェ自分が不器っちょだっていう自覚は無いンですかァァ?」
「あうっ、あうっ、あうっ」

小刻みに、連続してチョップを叩き込む。額を押さえて、美琴は涙目でしょんぼりと項垂れる。
年齢以上に幼い表情は、研究室での彼女の姿しか知らない学生が見たらさぞや目を剥くだろう。
勿論美琴に悪気など一切無い。それは一方通行にも十分にわかっている。
普段忙しい分、余計に張り切って母親らしいことをしてやりたいだけなのだ。それがわかっているだけに、美琴を本気で怒ることも一方通行にはできない。

一方通行は、髪を切られた時の情景がすぐに目に浮かぶ。

不吉さを運ぶようなジャキンという音と共に、想は目の前に落ちた自身のもの“だった”髪をわけもわからず見つめた。
次に、答えを求めるように見上げた母親の顔色の変わったその表情に、その“わけのわからなさ”が『不安』に変わった。
そして、鏡の中に映る見慣れない自分の姿に、不安が破裂した。
泣き喚いた挙句、毛布に包まり、想はリビングにでんと座り込んだ。

それが三時間前のことである。





<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/454.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice