26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/02/01(火) 14:58:22.88 ID:WnzhAyhd0
騎士「……勇娘、脚は大丈夫か?」
勇娘「大丈夫。お父さんは?」
騎士「……問題ない」
大陸の、端の、端の、端。
かつて魔王が住処としていた魔王城、そのすぐ近くの大地は、水はけも良ければ土も養分を多分に含んでいる、実に暮らしやすい土地であった。
しかし、かつて魔王が遺した魔力の残滓から魔物が常に湧いて出るため、誰も近づかぬ未踏の地でもある。
王都を発った後の騎士は、まだ小さかった勇娘を連れ、大陸中を旅して回った。安住の地を求めて。
初めはよくしてくれる者も多かったが、彼の正体、その身に刻まれた呪いを知ることで、誰もが彼を拒絶した。
いくら月日を経ても皺を刻むことのないその顔。いつしか騎士は、真紅の色に染め上げられた兜を被り、外すことはなくなっていた。
そしていつしか、真紅の鎧、まるで血染めの甲冑をその身に纏って、何かに取り憑かれたように魔物を屠り続ける彼の噂は大陸中を駆け巡っていた。
勇娘「お父さん、ここにするの?」
騎士「……ここなら、人は住んでいないな。二人でのんびり暮らすにはもってこいじゃないか?」
勇娘「のんびりって……、魔物がいっぱい出るみたいだけどね」
くすり、と笑みを漏らす勇娘。
五年の月日は人を大きく成長させるもので、齢十一となった彼女は、亡き母である僧侶の面影を多分に感じさせる美しい娘となっていた。
色々なことがありながらもまっすぐに成長してくれた彼女を、騎士は誇らしく思う。
そして、いつしか本当の娘のように可愛がっている彼女にすら、顔を見せることに恐れを抱くようになってしまっていた自分を情けなく思う。
娘に顔を、いつまでも老けないこの顔を、見せるのが怖い。
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