過去ログ - 兄「お兄ちゃん大好き……(裏声)」
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907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/17(日) 15:15:14.43 ID:xYJugbJuo
 アホらしい。
 クリスマスを憎むようなモテない男に、大それた事をする度胸なんてないに決まってる。
 振り返らずに歩いていると、突然、黒い壁が、私の先を阻むように現れた。
 
「ゲハハハー! クリスマスなんてくそったれだぁ! ミニスカサンタ服の女なんて、酷い目に合わせてやるぁぁ!!」

 壁の正体は黒衣を纏った巨漢だった。
 見上げると、角張ったひげ面には似合わない、つぶらな瞳と目が合った。
「ゲヘッ」と声を漏らしたそいつは、にやりと笑った。
 次の瞬間だ。
 強風に身体が捕らわれたかのように、私はその巨漢に抱きかかえられていた。
 あまりの急展開に呆然としていた私だったが、不審者、酷い目に合わせてやる、と言った言葉が思考を横切り、慌てて抵抗を始めた。
 
「放しなさいよ! みっともない嫉妬なんてしてるから、モテないんでしょう!?」

 そんな事を喚きながら、手足をばたつかせ、相手に打ち付ける。
 
「ゲフハハ! その程度、痛くもなんともないわぁ」

 効果はいまひとつだ。
 すがるような眼差しで探偵さんの姿を探す。
 元いた位置には、見当たらなかった。
 
「お友達は逃げ出してしまったようだなぁ! まとめて酷い目に合わせてやろうと思ったものをぉ!」

 道行く人々は、遠巻きに私達を見つめるだけだ。
 ふいに、景色が回った。巨漢が、この場を去ろうと身体の向きを変えた様だった。
 
「グフッ! 女みたいな奴だなぁ! そんなやせ細った身体で俺に歯向かおうと言うのか!?」

 探偵さんが道を遮るように立っていた。
 巨漢は、彼女を男だと思っているようだ。スカートじゃないし、胸が……仕方ないかも知れない。
 
「おい、君! 今、失礼な事考えただろ!」

 私を指して探偵さんが喚いた。
 
「い、今はそんな事より、助けなさいよ!」

 仕方ない、と呟いて、探偵さんは手にしていたフォークを巨漢目掛けて放った。
 風を切る音。私は思わず目をつむった。


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