350:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/07/31(火) 20:59:42.93 ID:nLqdHALGo
「それで、どうなされたのですか?夏、だと呟いていたようですが」
「え?えぇ、そうですね、これを見ていただけますか?」
後ろ向きな思考に陥っていた所を彼女の声で現実に引き戻された私は、
先程から首を傾げつつ私の答えを待っている彼女を隣に呼び、ディスプレイを指差した。
そこでは相変わらず私に対する謂れのない誹謗中傷が書き込まれ続けており、
それを確認した私は何ともいえない暗澹たる気分になってしまう。
「あら、これは」
食い入るようにディスプレイを見つめる彼女を見て、
私は不意に、彼女にこれを見せたのは失敗だったのではないか、と思い至った。
こんな粗野で品のない書き込みばかりのスレッドを見せられたら、
例えその書き込みが自分に向けたものではないにしろ、普通は不快な気分になるのではないか。
失敗したな、もう少し考えて行動するべきだった。私というやつは、いつもこうなのだ。
行動を起こして少ししてから自分の失敗に気付いてしまう。
それならばいっそ、自分の失敗に気付かぬ程鈍ければ、もっと気楽に生きる事が出来ただろうに。
普段これでもかと言うくらい鈍い癖に、そういうことにだけは気付いてしまうのだ。
私は今更ながら己の思慮の浅い行動を恥じ、自己嫌悪に陥りながら横目で彼女の様子を伺った。
「まぁ、これは夏ですね!」
しかし私の予想とは裏腹に、荒れ果てた私のスレッドを見た彼女は不快な顔をするどころか、
何とも嬉しそうに、それこそ、こんな嬉しそうな彼女は見たことがない、という程の様子で歓声を上げた。
彼女のそのような様子に、不快な思いをさせずに済んだ、と安堵したのも束の間、
私の中に、ふつふつと煮え滾る様な怒りの気持ちが沸き出してくる。
何だと言うのだ、彼女は。私は自分の立てたスレッドが荒らされて、散々に苦しんでいたというのに
一体何を彼女は喜んでいるのだ。こんなもの、何が楽しいのだ。
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