357:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/07/31(火) 21:03:07.26 ID:nLqdHALGo
「夏の風物詩とは言え、これ程スレッドが荒れるのは珍しいですね」
「えぇ、えぇ、その通りです。全く困ったものですね」
困ったものだ、と口ではそう言いながらも、彼女はちっとも困った素振りを見せていない。
「ふふ、本当に困ったものです。これほど荒れていては新しく投下する事もままなりません」
「そうでしょうね。今投下しても火に油を注ぐようなもので、一層スレッドは荒れてしまう事でしょう」
スレッドを建てた者にとって、投下すべきネタがあるのに投下出来ない状況であるという事ほど悔しい事はない。
にも関わらず、彼女は相も変わらず嬉しそうな顔で私の事を見つめているのだ。やはり、私は彼女の事がよくわからない。
「投下出来ないのであれば、荒れたスレッドをじっと見つめていても仕方がありません。
どうでしょう、久しぶりに、二人で外出しませんか?デェトというやつです」
少しばかり頬を赤らめながら、彼女は私にそう切り出した。なるほど、彼女は私と二人で出かけたかったのか。
スレッドが荒れていて喜んだのも、単にお揃いだからというだけでなく、デェトの口実が出来たが故だったのだろう。
最初に彼女が私の部屋を尋ねてきたのも、私は単なる彼女の気紛れだと思っていたのだが
もしかすると私を外に誘うことが目的だったのかもしれない。
今更そんな事に気付くだなんて、本当に自分の鈍さがいやになってしまう。
「えぇ、悪くありませんね。ここでじっとスレッドを見つめていても
荒れている状況が改善するわけでもないでしょうし、どこかに出かけましょうか」
期待と不安の入り混じった表情の彼女に微笑み返した後、私はゆっくりと窓の方へ顔を向けた。
視界に移る外の景色は雲一つない青空で、私の苦手な猛暑そのものを表しているのだけど、
それでも私は少しだけ、夏が好きになれそうな気がした。
―了
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