301: ◆XtjOmDyc46[saga]
2011/05/28(土) 05:12:44.98 ID:NFLpaoqXo
『こんな事になるなら力なんていらなかった』
最近でこそ減ったものの、そんな事を思ったのは一度や二度ではない。
独り歩く一方通行の耳に悲鳴のようなものが届く。
声の方向にあったのは小さな公園。どうやら子供が喧嘩でもしているらしい。
「はァ……」
溜息が洩れる。
勝手にやってろ、と言わんばかりに視線を戻し、歩を進めていく。
別に子供やその喧嘩が嫌いなわけではない。
五月蝿いのは好むところではないし、駄々をこねるガキはめんどくさい、とは思う。
だが、今出てしまった溜息はそれによるものではない。
嫌でも思い出される昔の事が原因だった。
「元気でやってンだろうな、あの野郎」
一方通行の脳裏に浮かぶのは黒髪の少年。
思えば彼との出会いも喧嘩からが始まりだった。
能力が芽生え始め、低レベルながら軽い『反射能力』が効いていた一方通行に唯一触れられる人間だった。
その能力ゆえ、親しい友人を作りにくかった一方通行は独りでいることが多かった。
話くらいはするものの、一定の距離から近づいてこない。
まるで腫れ物に触るかのような扱いに何度落胆したか分から無くなった頃、黒髪の少年こと、上条当麻はそっと手を差し伸べてくれたのだった。
彼が他の友人の方へ引っ張っていってくれたわけではない。
どちらかと言うと、一緒に気味悪がられる事を厭わずに隣にいてくれた、ただそれだけだった。
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