312: ◆XtjOmDyc46[saga]
2011/05/31(火) 19:03:42.28 ID:RaCc1kI5o
「で、でも……アイツは関係なくて……アイツが怪我を、傷を負う理由なんてないのに……」
美琴の言葉が震える。
無力な自分を責めているようだった。
「もしここから戦場に戻ったときに、彼がどうなっているかも分からないんだろう?」
「………」
学園都市の第一位と、無能力者の戦い。
本来なら数分も持たずに終わる戦いだ。
既に手遅れで、美琴が戻ったときには跡形もなく集結している可能性だってある。
「状況がどうなっていても受け止める自信があって、絶対に手を出さずに、自分一人でも生きて帰れる覚悟があるなら、行くといい」
震える足は言う事を聞かない。
前にも後ろにも、上手く動かない身体を叩く。
ここで全てを投げ捨てて逃げてしまえれば、こんなに楽なことはないだろう。
「……ちゃんと帰ってきます」
「君が出来る事は全て終わった後に、彼を連れて帰って来ることだけだ」
「大丈夫……アイツはきっと―――」
「甘い考えなら捨てることだね。厳しいかもしれないが、世の中はそんなに優しく出来てない」
実感のこもった言葉に息を飲み、美琴は前へと踏み出す。
絶望しか残っていないかもしれない戦場へと、再び足を踏み出す。
「二人一緒に帰っておいで。死なない限りは助けてやる」
そう言って、カエル顔の医師は手術室のドアの向こうへと消えた。
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