326: ◆XtjOmDyc46[saga]
2011/06/08(水) 20:27:05.69 ID:e3d7NYMPo
荒い息で、震えてしまいそうな声で、上条は一方通行へと告げる。
震える身体を支え、真っ直ぐ、紅い双眸を見据える。
迷いなどなかった。
ここに、この実験に飛び込むまでの間に覚悟は決めていた。
例え自らの身がどうなろうと、馬鹿な昔馴染みを引っ張り上げてやると。
「目ぇ覚めるるまで、何度でも殴ってやるよ」
「そォか……」
上条の言葉半分聞き流し、一方通行は地を踏みしめた。
たったそれだけ、予備動作や溜めすらも必要なく、彼の身体が上条の目の前まで進む。
それほど速くない、力のない一方通行の両拳が上条へと迫る。
一つ一つが最新鋭の科学で補強された、世界最強の破壊力を持つ手。
上条はそれを丁寧にかわし、あるときは右手で受け止める。
喧嘩慣れしていない相手のものとは言え、一瞬の油断が上条の命を奪う。
頼りなる武器などない。
RPGのように最強の武器なんて装備もなければ、相手の弱点となるアイテムも存在しない。
唯一の対抗手段となる『幻想殺し』の宿る右手も、出しどころを間違えれば死へのカウントダウンとなる。
(それにしても、だ……)
慣れてきた目で必死に相手の攻撃を捉え、正確に回避迎撃する中、上条の脳裏にふとした疑問が浮かぶ。
単純に勝利だけを目指すなら。侵入者の殺害だけを目的としているなら。
『一方通行が上条を殺すことだけを考えたなら』
(距離とってレールやコンテナで攻撃した方が安全で効率的に決まってんだろ)
近距離での一撃、それも右手一本しか攻撃手段のない上条に対し、わざわざ接近戦を挑む理由がない。
手の届かない範囲、もっと言えば百メートル近い距離を取ったとしても、一方通行は人を殺せるに十分な術を備えているだろう。
現に、最初にやったレールでの攻撃はまともに受ければ一撃で上半身を持っていかれる程のものだった。
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