333: ◆XtjOmDyc46[saga]
2011/06/08(水) 20:31:23.97 ID:e3d7NYMPo
一方通行は視線を上条から外し、窓の方を見る。
カーテンの隙間から見える風景はいつもと何も変わらない。
「今までの事について言い訳する気はねェ。こっから先は、俺の問題だ。オマエに心配される筋合いも、気を遣われるいわれもねェよ」
「……あんまり、抱え込み過ぎんなよ?」
「お前に言われりゃ世話ねェよ」
違いねぇ、と上条は溜息をつく。
苦笑い、と言ったような、力のない笑みを浮かべる。
表情こそ見えないものの、一方通行も似たような顔をしているのだろうと、勝手に想像しておく。
「じゃぁ、上条さんはお暇しますかね。ミサカんとこにも行ってやんなきゃダメだしな」
「二度とくンな、三下」
犬猫を追い払うように、一方通行は手を振るう。
追い払う気があるのかないのか分からないくらいの、やる気のないものだった。
「三下三下って……昔みてぇに名前で呼んでくれねぇのかよ?」
「オマエだって、名前呼びしてるわけじゃねェだろォが」
「ハイハイ、そうですね、鈴科くん」
「くン付け、とかしてんじゃねェよ」
「ぷぷー。昔は誰構わず『くん』付けで呼んでたじゃねぇか。それともあれか、鈴科ちゃんとかのがよかったか?」
「………オマエ、本当に上条か?」
一方通行は怪訝な表情で上条を見る。
彼の知る上条はもっと弱々しかったはずだった。
「ん?」
「お前……上条か?」
疑るような、呆れるような一方通行の顔に、上条はにっと笑いかける。
「正真正銘、上条当麻だよ」
パイプ椅子から立ち上がり、上条は個室の出入り口へと向かう。
一方通行は上条の背中へと目を向ける。
昔から比べると随分と大きくなったその背も、どこか懐かしく感じられた。
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