48: ◆XtjOmDyc46[saga sage]
2011/02/19(土) 20:05:58.92 ID:qw7dATgRo
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きっかけと言えばそれがきっかけだったのだろう。
ちょうど一年ほど前、上条が中学三年であったころだ。
このままじゃ近くの高校にも行けねーぞ、なんて担任に脅されつつ、今と変わらないくらいに補習地獄を送っていた頃だった。
完全下校時刻を過ぎてトボトボと寮まで帰ったものの、冷蔵庫が空っぽである事実を突きつけられそのまま近くのコンビニへと向かうハメになった。
辺りは暗くはなっていたが、上条のように食料を求める人や立ち読みに来た暇人、はたまた何となくたまっているだけのお兄様方と多種多様の品揃えもとい、人揃えを見せている。
「お財布的にもコンビニにお世話になるのはあんまりよろしくはないんですけども……」
上条は肩を落として溜息をつき、並べられた鮭弁を手に取る。
値段にして三百九十八円。
(安くはねぇよなぁ………)
かといって、他のものになると……。
上条は、陳列棚に並んだ他の弁当に目を向ける。
俺を買ってくれと主張している彼らは、どれもこれも五百円級の猛者ばかり。
財布に小銭しか入っていない上条にとって、この差は大きいものだった。
(カップ麺にしとくか?)
うーん、と頭を悩ませつつ、上条は即席麺コーナーへと歩いていく。
確かに弁当を買うよりも少しは安い。ただ、その差は微々たるものだ。
腹の膨れ方を考えればどちらが得かとは言い切れない。
「あぁぁ!? なんで売ってねぇんだよ」
いっそ食わねぇで寝ちまうってのもアリか、なんていう思考に辿りついたちょうどその時だった。
さっきまで立っていた弁当コーナーからクレームにも似た声が飛んでくる。
恐らく店中の注目を集めたであろうその声の主は、少しキツそうにみえるお姉さん的な人だった。
「くっそ……せっかく出てきたのに鮭弁がねぇとか……」
明らかに不満そうに眉を吊り上げている。
バツの悪そうな顔でレジ前に立っている店員さんを恨めしそうに見て、彼女は別のものを物色し始めた。
(な、なんか怖そうなんですけどもぉぉぉ)
上条は得体のしれないドキドキ――勿論、恋ではない――に襲われながら、右手を見る。
そこに握られているのはさっき確保した鮭弁。
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