50: ◆XtjOmDyc46[saga sage]
2011/02/19(土) 20:07:30.11 ID:qw7dATgRo
「なんで逃げたんだ、俺ぇぇぇぇっ!?」
何に動揺したのか、急に恥ずかしくなって逃げた上に、無意味にランニングなんぞ決めてしまった上条は、汗ばみながら肩で息をしていた。
なんとか呼吸を整えるものの、張りついてくるTシャツの不快感からは逃げられない。
うげ、と顔をしかめて走って来た道を振り返る。
「今のは出会いのチャンスと言う奴だったのではないでせうか?」
独白に応える者はいない。
鮭弁好きのお姉さんの余裕のある頬笑みに、どう応えていいかも分からなかった。
「しっかし………お姉さんとかストライクゾーンど真ん中だったんじゃねぇのか、おい」
ドキドキと高鳴る心臓――走ってきたからであって、断じて一目惚れとかではない――の音をうるさく感じながら、上条は数分前の事を思い起こす。
好みのタイプは『寮の管理人みたいな年上のお姉さん』と公言しているが、正直なところそれほどこだわりはなかった。
女の子といちゃいちゃするのは憧れではあったし、年上年下にこだわるほどモテるとも思っていない。
修学旅行の夜的なシチュエーションで答えるために用意した、いわゆるテンプレートに過ぎない。
「ちょっと、怖い感じではあったけど」
絶対に逆らえねぇだろうな、と上条は苦笑いを浮かべる。
第一声のアレを思い出し、身震いする。喧嘩慣れした上条でも、言葉で精神的に削られるのには流石に勝てない。
青髪ピアスなら喜んで飛びつきそうではあるが。
「ちょろっと、そんなトコに突っ立ってないで……邪魔だからどいてくれる?」
「うぇ!? すいませんっ」
慌てて前に向き直り、道を開ける。
迷惑そうな顔で立っている中学生くらいの女の子がそこにいた。
「ったく………ぼーっとすんならもっとマシなとこでやってよね」
「あー、悪い」
やれやれと首を振る彼女に一応謝りつつ、上条はさっきまでのテンションをすっかり失っていた。
(つか、わざわざ俺のいるとこ通んなくてもいいだろ……)
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