7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/02/16(水) 22:39:18.01 ID:yiTG7ZAso
心の中で盛り上がっていた感情が、一気に冷めていくのを感じる。
膨らました風船を液体窒素に突っ込んだような。
潤いかけた砂が一気に渇いていくような。
そんな感情。
「ま、そんな上手くいくわけないよな」
つい数秒前に口から出た言葉。
文字としては、字面としては同じであるその言葉も、内包する意味合いは全く異なっていた。
(なんつーか、ついてねーっていうか)
はぁ、と溜息をつく。
下がったテンションを持ち上げる術も思い付かないままに、
「不幸だ……」
ついつい口癖が漏れる。
それくらいには、上条は返信に期待してしまっていた。
上条自身は気にしていないつもりでも、どこかワクワクしていた。
思い出に対して期待するようなものだと分かっていてもだ。
ピリリリリ。
そんな重い空気を切り裂くように、不意に電話が鳴り響いた。
携帯電話ではなく、固定電話の表示パネルに知った名前が表示される。
上条はあからさまに嫌そうな顔を作ると、躊躇いがちに受話器を取る。
「もしもし……」
『あ、上条ちゃんですかー? 世間では今日から夏休みですけど、上条ちゃんは馬鹿だから補習ですよー?』
邪気のない声が電話口から洩れる。
この幼女のものにしか聞こえない無邪気ヴォイスは、何を隠そう上条の担任のものだった。
月詠小萌。
学校の七不思議どころか、学園都市の七不思議に数えられてもおかしくないくらいの先生のものだった。
「あー、ですよね……」
『上条ちゃんは忘れてないと思うのですが、一応確認しておこうと思ったのですよー。ちゃんと来てくださいね?』
「はい………」
『それでは、待ってますよ―』
妙に楽しそうな声のまま、電話が切れる。
それと同時に、上条はがっくしと肩を落とす。
世間は何して遊ぼうかと浮かれているというのに、何が嬉しくて補習等に顔を出さなくてはならないのか。
自業自得ではあるのだが、納得しきれない。
「やっぱり、不幸だ……」
息を吐き、時計を見る。
補習に出かけるにはもう少し、時間がありそうだった。
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