過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/02/23(水) 05:59:32.84 ID:PpVfCaewo
 ガンッ、という衝撃が上条を襲い、呼吸が、拍動が、思考が急速に鈍る。
 考えるまでもなく、右手が左胸を叩く。瞬時に上条の生命が復帰する。それはいつも通りの
打ち消し、対象が自分になっただけだ。こんなちゃちなものを畏れたのかと、自嘲する。
「ちっ、単純な『死』では足りぬか。ならば――」

「窒息死!」
「無駄ァ!」
「感電死!」
「無駄ァ!」
「絞殺!」
「無駄ァ!」
「ロードローラーだッ!」
「無駄ァ!」
「轢殺!」
「無駄ァ!」
「爆殺!」
「無駄ァ!」
「撲殺!」
「無駄ァ!」
「焼殺!」
「無駄ァ!」

「な、なるほど。全てはその右手なのだな? ならば――」
 荒く乱れる呼吸。新たな鍼を突き刺しつつ叫ぶ。
「刀身を展開、音速で旋回し右腕を切――」
 その命令が下される寸前、あり得ない方向からアウレオルスに声が届く。
「おっと……、そいつは、見過ごせねえな……」
 上条を睨み過ぎていたアウレオルスの視線が泳ぎ、声の主を捉える。ここに至って、アウレ
オルスは初めてがく然とする。
「貴様……どうして……?」
 『右手』を持つ上条以外には誰も、打ち消すことのできぬはずの呪縛を鷲掴みに、倒れ伏し
ていなければいけない男が、アウレオルスの視線を同じ高さで跳ね返しているのだ。
「どうもこうもねえ……。この『重力』に反逆した、それだけよ……」
 ガクガクと震える膝を根性で引きずり、通常の数十倍にもなる重力に抗って立つカズマ。そ
の、やや腰を落とした格好は、アウレオルスの目には紛れもなく攻撃の構えとして映った。
「シェル……ブリッ……ト……」
 もはやなりふり構わず、アウレオルスが必死の命令を下す。
「対象を変更! カズマという男を切断!」
 アウレオルスの手に出現した西洋刀が、一瞬ののちにカズマの背後の壁に突き刺さる。切り
飛ばされ、宙を舞うカズマの右腕。しかしカズマはまるで怯むことなく――

 ――まるでそこに腕がついたままであるかのように構え、そこにあるがごとき『拳』を握る。
その場の全員が、凍りついたように動かない。
「何……を……?」

「へっ……これが、再々構成……だ……」
 その声と同時、宙を回転する腕が弾けるように分散し、カズマの肉体のあるべき場所に『ア
ルター化』した。
「行くぜ……。シェル……ブリッ……ト……バース……ト……ッ!」
 縛りつける鎖の全てを引きちぎり、ゆっくりとカズマが加速する。アウレオルスまで、あと
三……、二……、一歩。
「うわあああああ! 攻撃を回避! 回避!」
 懐から振り出した鍼を掴むのももどかしく、首筋めがけて闇雲にアウレオルスは突き刺す。
そこが正しいツボであるかなど、考える余裕もない。

 ――交錯する二人、しかし間一髪、カズマの拳がアウレオルスの正中線を捉えることはなかっ
た。

「倒れる……時も……前のめり……だ……ぜ……」
 右拳を打ち出したままの格好で、再度、床に縫いつけられるカズマ。その声に上条が震え、
応え、跳ねる。
「ウオオオオオオッーー! イ、マ、ジ、ンーーーーッ! ブレイカーァアアアアアア!」
 異能の力を打ち消す、それ以外は到って平凡な上条の拳。しかしいま、その拳には必殺の弾
丸が込められた。
「こ、攻撃……。迎撃を……。あの『右手』は――」
 慌てて懐の鍼を探るアウレオルス。だがしかし、そのイタリア製の純白のスーツには、すで
に懐と呼べるものはついていなかった。いや、彼にはもう、何も残っていなかった。

 カズマの拳が鍼を、攻撃の全てを奪い、上条の拳がいま、防御の全てを打ち砕く――

(無理……だ……こん……な。敵う、はず……が……、な……死……)
 アウレオルスは恐怖に支配され、身じろぎもできない。ゆっくりと、何十倍にも引き延ばさ
れた打撃の、敗北の瞬間が、哀れな錬金術師に襲いかかった。


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