過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
1- 20
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/02/22(火) 02:00:37.18 ID:/pndMPNTo
 言うなり、男の周囲の地面が抉れ、虹色の光が男の肩から腕を覆い、実体化する。腕の全体
を金色の装甲が包み、拳は鈍く赤く、そして背に生えるは三枚の赤い羽根。
「これは! やはりこの男、能力者――」
「こいつが俺の『力』だ。お前に『覚悟』があるんなら、まずはこいつを倒してみな!」
「いいでしょう。一瞬に七度の必殺を、とくと味わって下さい」

 七閃。
 七閃。
 そして、七閃。

 地面が、街灯が、街路樹が切り裂かれ、舞う。しかし、その場を動きすらしない男の、その
身体には傷の一つもついていない。
「――『七閃』では埒が明かない、と。どうやら、まぐれの類いではなかったようです。まあ、
私とて、この『七天七刀』はまだ、抜いていませんが」
「入ったかい? お前の中の『スイッチ』は」
 その挑発に、神裂のこめかみが音を発てて引きつる。
「なるほど……。どうやら、名乗らなければならないようですね。二度と名乗らぬと決めた、
あの名前を、もう一つの名を……ッ!」
 ビキ、と神裂の纏う空気が震える。『七天七刀』の柄に、手がかかる。
 スッ、と男が腰を落とす。右腕を前に突き出し、そこに左手を軽く、添える。

「――Salvare000(救われぬ者に救いの手を)ォォ!」
「――衝撃のォファーストブリットォォ!」

 斬! と空間そのものを両断し、音速を超える斬撃が男に襲いかかる。
 轟! と一個の弾丸と化した男が、己の道を突き進む。

 『唯閃』は完全な攻撃術式である。仏教、神道、十字教のそれぞれを組み合わせ、弱点を相
殺することで、あらゆる宗派への有効打となりうる攻撃であり、その刃は『神の力』にも届く。

 ――では、その対象が魔術サイドに属していなかったら?
 ――そもそも宗教の何たるかすら、知らない男だったら?

 世界が破裂する音、人間の可聴域をはるかに超えた音が、周囲を埋め尽くす。爆風が鋪装の
残骸をまき散らし、街路樹の切り株を根こそぎにした。
 風が退き、激突した二人の姿が現れる。共に、無傷。
「これだよ、これ。この毛穴の開く感覚がたまらねえ」
「よもや『唯閃』を受け切れる『人間』がいるとは、些か驚きました」
 しかし、と、いくらか残念そうな顔で言葉を継ぐ。
「この程度で全力と思われるのは心外ですが、これ以上の戦闘は許容致し兼ねます」
「どうした? まさか――」
「もちろん違います! しかしこのままでは、この領域が持ちません。『人払い』をしてある
とはいえ、この周囲の建物内には人がいます。無関係の人々を巻き込んでしまう訳には――」
「……まあ、そうだな」
「続きはいずれ、必ず」
 対峙する二人が、乾いた笑みと共に、視線で約束を交わす。――いつか、どこかの戦場で。

「じゃ、このあんちゃんは貰ってくぜ。構わねえよな?」
 神裂の答えを待たず、
「よっ……と。おい、まだ生きてんだろ? 死ぬなよ?」
 無造作に上条を背負い、歩き出す。
「またな」
「あ……、私は神裂、神裂火織」
「カズマ、シェルブリットのカズマだ。苗字はねえ」振り向かずに答える。
「次は、勝たせて頂きます」
「そうかい、そりゃ楽しみだ」
 遠い笑い声が、足音と共に通りに響く――

(こうして誰かを背負うのも久しぶりだな……あの日……以来、か……)

「おい、あんちゃん、生きてるか?」
「あ……が……」
「ああ、生きてりゃいい。んで、どっちだ? この先。右でいいのか?」
「う……」
 上条、ボロボロの指先でカズマの右腕を二度、叩く。
「ん? あ、ああ。そうか、後ろか。すまねえな」
 回れ右、来た道へ戻るカズマ。その先では神裂が、気まずそうに二人を見ている。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
202Res/279.72 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice