過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/02/23(水) 06:28:25.99 ID:PpVfCaewo
 八月十五日 二十一時 第一七学区 操車場

 欠損した左脚からの失血が、致死レベルに達することを確認し、移動能力の減衰により有効
な延命の可能性が失われたと判断した時点で、九九八二号の『実験』は終了した。
 これから死亡に到るまでの時間が、『実験』から解放された彼女の、真の意味での人生の全
てとなる。
 九九八二号に死への恐怖や、生存への渇望というものはない。単価十八万円の実験用検体と
して使用され廃棄される、量産された模造品であることに疑問を抱く余地がない。自分の命に
十八万円以上の価値がないことを知っている。だからこそ、

『お姉さまから頂いた、初めてのプレゼントですから』

 九九八二号は最初にして最後となるだろう行動の選択を、逡巡なく選択し、実行に移る。
 大量の出血を続ける左大腿部への意識を遮断する。痛覚の絶叫を切り捨てる。聴覚を放棄し、
視野を狭める。余計なものは視野の外へ流し、たった一つの価値あるものを捉え、求める。

 暴走した雷撃の槍が弾いて落としてしまった、カエルの絵のついたバッジ。

 地面を掴んで這い、進む。砂利に血の轍を残し、手を伸ばす。赤く染まる視界、震える指が
姉からの贈り物に触れる。今日の、かけがえない思い出と共に薄い胸に抱いて、強く思う。

 ――いらない。私は他に何もいらない。

 自分の次の者が、回収されたコレをつけた姿を想像してみる。今日の情報は共有されている
のだから、このバッジは羨望の的になるだろう。カエルのバッジをつけた誰かを見て、姉は喜
んでくれるだろうか。だとしたら、それはとてもいいことかも知れない。

 しかしその想像は実現しない。

 『実験』の被験者が線路からぶん投げた、重さ数十トンの保守用車両が九九八二号の頭上に
迫っていて、まもなくその車重が彼女もろとも、バッジを復元不能なまでに破壊するから――

 ではない。


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