過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/04/07(木) 00:24:32.16 ID:/res8IJko
 九九八二号の眠る病室へ向かう廊下で、『実験』に戻らない理由を問われた一九〇九〇号が
胸を張って答えた。
「はい。死んであげません、とミサカは『絶対能力進化』を否定します」
「よかったら、その心変わりの理由を教えて貰えるかしら?」
「こんなところで死ぬことはないと、あの人は言いました、とミサカはたった一つのシンプル
な理由を披露します」
「それだけ、なの?」
「それだけです、とミサカは断言します。生きると決めるのに必要な理由は、これで充分だと
ミサカと全てのミサカたちは結論しました」
「その生き方が犠牲を伴うとしても?」

 ここで、この瞬間に、一九〇九〇号は生まれて初めての笑顔を見せた。それが少しだけ猛り
を帯びているのは、お手本が姉だからであって、彼女に責はない。

「上等です、とミサカはミサカの覚悟の程を見せつけます。既に九九八一回の死を経たミサカ
が怖れるのはそんなつまらないものではなく、何の証も立てないまま朽ち果てることです、と
ミサカはそれだけは死んでもごめんです」
「……そう。感化、ってよりはバカが感染ったってのが近いような気もするけど」
「この想いがバカと揶揄されるものだとしたら、ミサカはバカで構いません。むしろそのバカ
を極めます、とミサカは拳を握りしめます」
「うわぁ。齢十四にて情操教育の重要性を痛感する羽目になるとは! どこか、どこかに博愛
と良識に溢れる女神は……!」
 美琴の脳裏に肉親、同居人、友人、知人、教師、寮監などの顔が片っ端から再生される。
「該当者……ゼロ……?」

 美琴が『とある高校』を訪れたことがあれば、一三五センチの天使と知り合う機会があった
かも知れない。しかし、彼女に倣った場合、慈愛と引き換えに『豪放な私生活』という極太の
おまけが付与されてしまう。妹の住まいが競馬好きのオッサンのそれになってはいけない。
 そして、いずれ起こるであろう『とある魔術書』を巡る事件に遭遇すれば、某教会を追われ
た博愛と献身の権化とも呼ぶべきシスターを、窮地から救えるかも知れない。が、彼女に師事
した場合にはそれらを会得する代償として、様々な面での防御力が壊滅的な減衰を起こしてし
まう可能性が極めて高い。
 結局のところ、それは上級者向けの痛し痒しなのだ。

「ま、まあ、とにかく、まずは姉であるこの私をサンプルとして、この世界に慣れるべきだと
思うのよ。あのバカはピーキー過ぎて常人には無理だから」
「その無理に反逆する、とミサカはキメたいところですが、この場は素直にお姉様に従うこと
にします。他ならぬお姉様からの忠告ですから」
「……私も努力するわ」
 努力を怠ると私もこうなるのか、と美琴は決意を固めた。彼女にはまだ、自覚症状がない。

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