過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.8
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(福井県)
[sage saga]
2011/03/21(月) 13:56:35.78 ID:FMps6rDmo
「僕は少し寂しいけどね」
「またまた〜」
「むぅ〜。本心なんだけどなぁ」
この発言についてはどうやら本気だったようで、フェイトさんは拗ねてしまった。もうすぐ三十路の女性なのに、そんな可愛らしい仕草が妙に似合っていた。
それも一瞬で、フェイトさんは俺にすっと近付くと、そっと話しかけてきた。
「ねぇ、京介くん。君の眼鏡、もう一回貸してくれないかい?」
「はぁ。別にいいっすけど」
その言葉の真意がわからないまま、俺はフェイトさんに言われたとおり、ポケットから眼鏡を取り出した。
眼鏡を受け取ったフェイトさんは、それを掛けてこちらに向き直った。うん、やっぱり似合う。
そんなことを思っていたら、フェイトさんがこちらに近付き、首を両腕で抱かれ……唇を塞がれた。
「!?」
声も出せず、状況も理解できず、俺はただ呆然と、フェイトさんのされるがままになっていた。
アルコールの匂いと、女性特有の柔らかな匂い、控えめな香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
時間にして五秒も無かっただろうが、俺には随分と長く感じられた。唇から伝わる感触が無くなり、フェイトさんの顔が視界に入る。
「あ、あの……」
「ふふっ」
俺がまともな言葉を出す前に、また唇を塞がれた。
今度はより艶かしく、情熱的に、唇を吸われ、舌を入れられ、唾液を吸われ、口腔を蹂躙された。
未だに状況が飲み込めず、俺は突っ立ってることしか出来なかった。
十数秒程経っただろうか……。俺を解放したフェイトさんは、二歩ほど後ろに下がって距離を取った。
「煙草の味……。でも、嫌いじゃないよ」
そう言って、唇を舐める眼鏡の美人。頬を赤らめながら、唇を濡らしながら、妖艶に微笑む。
その様は蠱惑的で、思わず見惚れ……いや、魅入られていた。
フェイトさんは眼鏡を外すと、俺に近付いて、それを掛けてくれた。遠くまでクリアになった視界の中、それでも俺はフェイトさんの顔を見て呆然としていた。
俺に眼鏡を掛けると、フェイトさんはさっきのようにまた体を寄せてきた。今度は、耳元に口を寄せて、
「次に会ったときは、もっと大人らしいことをしよう。もちろん、僕とね……」
そう囁いて、駅の中に入っていった。
ようやく現実に戻った俺は、自分の唇を指で撫でた。まだ少し湿っていて、フェイトさんの名残が俺の指を濡らし、妖しく光っていた。
俺は、フェイトさんの去り際の言葉の意味を考え……こう漏らした。
「あの人とは……もう会わない方がいい気がする……」
おわり
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