過去ログ - 長門「------の消失」
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4:松本晶[saga]
2011/03/03(木) 15:49:26.60 ID:2rhgDyLL0
「貸し出しを・・・お願いします」

「はい、この二点で宜しいですね?」

「はい・・・」

 職員さんはバーコードを読み取って、本の状態をチェックした。すると突然、妙な顔をしだした。

「・・・・? すみません。もしかして、こちら・・・」

 貴方のものでは? と、きっと繋げたのだろう。しかし、その言葉は私の耳には入らなかった。

「あっ・・・・・! すいません、私の・・・」

 嘘だ。でもそれは誰のものでもない。持って良い人なんか、この世のどこにも居ないだろう。でも、私はそれが欲しい。その栞を見る。間違いない、見間違うはずもない。

「はい、ではそのまま貸し出し処理をしますから」

「・・・・・すみません。やっぱり、貸し出しは、止めておきます」

 区切りながら言う。もう、今日は読めそうにないから。

 その後のことはよく覚えていない。駅への道中、鶴谷さんが私にいつもより一層明るく私に構ってくる。よっぽど暗い表情をしていたのだろうか、でも申し訳ないことに鶴谷さんに何か弁解をする余裕も私にはなかった。



 駅前に着いて涼宮さんが期待を込めた目で私達に語りかける。

「有希、鶴谷さん! 何か不思議はあったかしら?」

「あー、悪いけどハルにゃん。図書館に・・・」

「あった」

「・・・え?」

 鶴屋先輩が怪訝そうな顔をする。それはそうだ、私はずっと鶴屋先輩と一緒に居て、しかもずっと本を読んでいた。全くと言っていいほど動かずに不思議を見つけたなんて、嘘くさく出来すぎだろう。この集まりが始まってから一年弱は経っているし、その間不思議なんて言う者は一回も見つからなかったということもある。

「有希?」

 涼宮さんは、私がこんなことを言い出したのに面食らってしまっているようだ。不思議を探しているのに、不思議が見つかると驚くだなんて。少しおかしくなってしまって微笑みながらその眼前に、みんなにも見えるように私はそれを差し出す。

「?」

 朝比奈先輩は全く感付いていないが、涼宮さんは蒼白になって、更に複雑そうな表情で古泉君が言う。

「それは・・・・」

『プログラム起動条件:なし。12/18迄。部室にて待つ』

 あの時、彼の落とした------

「期限は今日までだから、団活を可能な限り延ばしたい」

 そうすれば狂騒的だったあの数日間が、戻ってくるのに違いないから。


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