146:1だよ[sage saga]
2011/03/19(土) 01:57:05.34 ID:w/tOYH6N0
「毒されてるにゃー。これは」
監視するのが仕事だったはず。
しかし日常にも身を置いていたせいか、いつしか感情移入してしまうようになった。
『はっきり言うわ。アンタに当麻の友達を語る資格なんて無い』
「(友達………)」
これは嘘。彼はただの監視対象。
『こんなときだからこそ傍にいるのが友達でしょうが!!?』
「(友達じゃ……ない…)」
これも嘘。
大切な人で無いならば、事あるごとに理由を付けて上条の部屋を訪れる必要はない。
だが、何度彼を訪ねても、返ってくるのは懺悔のみ。
懺悔という名の、土御門の無力を突き付けられるだけ。
「友達であるわけ……ないぜい」
本当に友達で、大切な戦友であるならばそれを赤の他人に渡したりはしないだろう。
あの人もこんな気持ちだったのだろうか?
いつもあの病室で現実を思い知らせれ、
自分には何もできないから誰かに頼むしかない、そんな現実《絶望》。
『―――でも……後悔したくないから―――』
『―――できることをしないでこんな気持ちになるのはもうイヤだから―――』
あの人はこうも言っていた。
土御門もそれに同意する。だから行動した、つもり。
上条が倒れたと聞いて、彼が穏やかに“眠っている”と聞いて、彼は二つの賭けに出た。
片方の結果は上出来、いや、予想以上と言える。
上条から携帯を借り、御坂美琴を呼び出して、近寄るなと警告する。
彼女が彼に好意を抱いてることなんて、当事者を除けば周知の事実。
当然ながら彼女は反発し、危険を承知で彼を支えると叫んだ。
『私が一生懸けて証明してやる!!』
まるでプロポーズだ。流石にあんな過激なことを大声で叫ぶとは思うまい。
「お似合いかにゃ?」
本当にあの二人は似ている。
もっとも、似ているだけで同じではない。
美琴の決意は上条を彷彿とさせるが、明らかに彼とは異なる点がある。
それを指摘するのは無粋。言わないでおこう。
そしてもう片方の賭け。
これに関してはどうなるかはわからない。御坂美琴次第だから。
それに関しては正直に言って期待半分、後悔半分と言ったところ。
なぜなら―――
「(俺が殺した………か……)」
上条は臆面もなくそう言った。今でも土御門には信じられない。
たとえ敵であろうと、今まで彼は命までは奪わなかったはず。
どうして土御門が右方のフィアンマが死んだ事を知っているか、それはレッサーから聞いたから。
『気絶していた上条の周辺に“散らばっていた肉片”は―――
それらに付着したモノから察するに……フィアンマです……きっと…』
彼女は当分肉類は喉を通らないだろうとゲンナリしていた。
それほどまでに悲惨な現場だったらしい。
つまり―――
上条が、そんな残虐な方法を選んで殺した、ということ。
土御門は今日、彼の口から聞かされるまでは信じていなかった。
だが、事実らしい。認めたくはないけれど。
「なあ、かみやん。
オレは《ベツヘルムの星》で何があったかが聞きたいわけじゃないんだ。
お前自身に何が起きたのかを……それだけを…知りたいんだよ………」
暗闇にて、土御門の独白は続く。
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