53:1だよ[sage saga]
2011/03/09(水) 00:31:54.87 ID:7f1o9zsU0
「いただきます」
手を合わせ、そう、言う。
もちろんその言葉に続く者はいない。
またもや暗い方向に向かいそうになるのを打ち切り、レンゲを持つ手を伸ばした。
献立は 炒飯 中華スープ。
美琴の料理は一時は冷めていたにも関わらず、素晴らしい出来だった。
少なくとも、この状態ですら少年よりも上手といえる。
出来たてならばもっと美味しかったのかもしれない。
叶うならばその状態で食べたかったが、そんな贅沢を言おうものならば殴られるだろう。
黙々と、食事と言う名の動作を消化するように、食べる。
「まずい」
作った本人が聞けば間違いなくキレる言葉が口から出てしまった。
手は止まらない。
「つめたい」
湯気が出ているそれらを掻き込むようにして流し込む。
それでも手は止まらない。
「おいしく………ない」
震える声で、泣きそうになりながらも、それでも少年の手は止まらない。
不味い ではなく まずい。
冷たい ではなく つめたい。
美味しくない ではなく おいしくない。
その違いにどんな意味を込めているのかは、彼にしかわからない。
食事を終え、後片付けを済ませ、シャワーを浴び、寝床の準備をする。それはもう慣れたサイクル。
そこで浴室に電子音が鳴り響いた。
「電話…か? 誰から?」
画面に映る相手の名前は 月詠 小萌
ゲッと言いたくなるのを我慢して通話モードに切り替える。
せっかくシャワーを浴びてすっきりしていたのに、顔から脂汗が噴き出してしまった。
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