過去ログ - 唯「直死の魔眼――?」
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46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/07(月) 20:02:42.70 ID:/pwNr4Li0
 
唯「―――ううん、なんでもないよぉ」

憂「……何か、あったの?」

 憂が眉をハの字にしながら、伺うような声色で訊ねて来る。
 手に握り締めていたお守り代わりの眼鏡を差し出されて、
私はそれ両手で受け取ると玄関の靴置き場に置いた。

 さっきまでのことは何も覚えていない。
 ――覚えていないけれど、これだけは識っている。


 このお守りは、もう必要ない。

 
 靴を脱いで、玄関に上がる。
 追いすがるような憂の視線が私のそれと絡まって、見詰め合う。
 憂の瞳に写る私の笑顔はしまりがなく、だらしないけれど。どこか晴れ晴れとしていて。

 何かに感づいたらしい憂が、お姉ちゃん、と言葉を重ねる前に、私はその髪の毛に触れた。
 指先に細く、指通りの良い滑らかな感触が乗る。


 久方ぶりの――――否。それどころの話じゃない。
 きっと、十年ぶりになるスキンシップ。


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