2:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga]
2011/03/08(火) 22:32:09.92 ID:ahLj9amNo
「あ、う……んっ」
ドキドキする。自分の甘噛みで上条がなんだかドキドキしてくるような嗚咽を漏らすのだ。
始めたときは姫神に対する対抗心があったのだが、どちらかというと今は上条の反応を楽しむためにやっていた。
「ぷは、秋沙。もう……」
「私とキス。嫌?」
「そんなこと、うぁ、ないけ、ど」
姫神と会話する上条にちょっとムッとしたので、耳の奥のほうまで舌をねじ込んでやった。
くすぐったがって暴れる上条を、無理矢理に抱きついて押さえつける。
上条にべったりとくっつくいい口実だった。
「とうまって、耳、弱いの?」
「し、知らねえよ……」
ちゅっともう一度耳たぶをついばむ。そろそろ、潮時か。
これ以上やれば本当に姫神が怒る、そういうギリギリの線だった。
「当麻君は。こういうことする女の子が良いの?」
「……いや。どっちかって言うと、俺は秋沙にするほうが好きだ」
「……ふうん」
安心したような、勝ち誇ったようなその返事にインデックスは悔しくなる。
知ってることだ。上条が自分じゃなくて姫神を選んだことなんて。
今夜は、負けると知っていながら足掻く夜なのだ。いや、もう、だったのだと言うほうが良いかもしれない。
ベッドに入って時間もかなり立った。それなりに暴れて、疲れがまぶたにのしかかり始めた。
「……グス」
「インデックス?」
「なんでもない……よ」
嬉しい。
上条は、ほんの少し涙がこぼれて鼻をぐずらせただけの自分に、すぐ気づいてくれた。
嬉しい。
こちらを見つめてくれたその目が、本気で心配してくれていた。
嬉しい。
こんなに心配してくれる人が、これからも毎日傍にいてくれるなんて、なんて幸せなんだろう。
……そして、どうしてこんなに素敵な人を、もっと早く独占しなかったんだろう。
「あ、インデックス」
「おやすみ、とうま。……それとあいさ」
最後にインデックスは、上条にのしかかるくらい体を上条に多いかぶせて、抱きついた。
上条の占有面積で、姫神に勝つ。どうせ今日、これっきりでおしまいなのだ。
最初で最後の一勝だけは、死んでも譲らない気だった。
「……おやすみ。インデックス」
「まあ、寝苦しくなったらどかすからな? お休み」
「離れないもん。とうまが、私のこと嫌いって言わない限り。……おやすみ」
馬鹿、と上条が笑うように言って、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
インデックスはもう、上条の胸にうずめたまま周りを見なかった。
上条と姫神がキスをしたような衣擦れの音は、聞かなかったことにした。
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