過去ログ - 上条「もてた」part2
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53:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga]
2011/05/28(土) 19:27:01.77 ID:b4BV+tQLo

突然のその告白に、上条は、そして物陰にいた姫神は、硬直するほかなかった。
吹寄は今、俺のことを、好きだといった?
なにか信じられないようなものを聞いたような気がして、その言葉に乗せられたはずの重たい意味を、
上条はちゃんと受け取ってやれなかった。

「……なんだ。やっぱり全然気づかれてなかったか。そんなんだから、貴様は姫神を困らせるのよ」
「……」

自分のそういう機微の疎さは、確かに直すべきところだと思っていた。
思っていながら、吹寄の気持ちに疎かったのだと、気づかなかった。

「ごめんね、上条」
「え?」

謝るのは、むしろコッチのほうだろう。
好きだといってくれた気持ちを、上条は受け取らないのだし。
そして気づいてさえ、やらなかったのだし。

「嘘ついてて、ごめん。……姫神にはバレてただろうけど、私にも、虚勢の一つくらい張りたい時があったのよ。
 上条が姫神に惹かれてるの分かってて、それを横からどうにかできるくらいの勇気なんてなくて、
 上条のことが好きだったのは私だなんていえなくて。……私の友達の話ってことに、したんだ」
「……そうか」
「あーあ、スッキリした」

肩の荷が下りた、というポーズを吹寄はとって、はあっとため息をついた。
上条とて内省はある。女の子の、そういう表には見せない気持ちを、もっと汲み取ってやらないと。

「吹寄。気づいてやれなくて、その」
「だめよ。上条」
「……」
「謝らないでよ。お願いだから。惨めになるのは私でしょうが」

また、やってしまった。そうやって吹寄の虚勢を引き剥がして、素顔を覗き込むような真似をしてしまった。

「吹寄。俺がかけられる言葉なんて、ないのかもしれないけど。また、遊ぼう」
「うん。そうね」

吹寄は、無理だと思いながら笑った。
時間はいつか癒してくれるかもしれない。
だけどもう、もっと親密になれるかもしれないと言う期待を持って上条と遊んだ日々は、戻らない。
その儚い事実が、吹寄の心にじんわりと染みた。そして頬に現れたのは、笑顔だった。
上条はまたも、吹寄に見蕩れた。真面目で芯のある吹寄の柔い泣き笑いは、美しかった。
それ以上何も言わずに、吹寄は上条を置いて体育館裏を後にした。
それを見送って、上条は壁を背に、空を見上げた。
平常どおり空腹感を伝えてくる自分の体のデリカシーのなさに、少し嫌気が差した。

「吹寄が、ねえ……」

可愛いクラスメイトだった。いや、そういう感想はきっと、告白されたから強く抱いているのだ。
もっと、うるさいとか怖いとかお堅いとか、そんな評価を与えていたではないか。
自責とも少し違うやりきれない思いを抱えながら、
充分時間が空いたからと自分も教室に戻ろうかと足を踏み出したところで姫神に出くわした。

「秋沙」
「当麻君」
「聞いてたのか……?」
「吹ちゃんに。メールで呼び出されたから」
「そっか。どういうつもりだったんだろうな、アイツ」
「中身は。心臓が止まりそうな内容だったよ」
「え?」
「『今から上条当麻に告白するから止めたいなら急いできなさい』だって」

それは、確かに無視できない内容だろう。友達のはずの吹寄の、挑発するようなメール。

「それで来たんなら、どうして声かけなかったんだ?」
「だって。私には関係ない」
「え?」
「当麻君と吹ちゃんの関係は。私には関係ないから。当麻君が決めることでしょ?」
「……そうだな」

姫神を、上条は校舎裏に手を引いて連れて行った。そして、ぎゅっと抱きしめた。

「当麻君」
「俺は、吹寄のこと、好きだ」
「えっ?」

抱きしめられたのに反したその言葉に、姫神は戸惑った。



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