60:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga]
2011/05/28(土) 20:04:00.63 ID:b4BV+tQLo
「御坂のヤツのことも好きだ。インデックスも好きだ」
「……当麻君」
「これを言うと、秋沙は傷つくかもしれないけど。なんだかんだ言っても雲川先輩のことも好きだし、
五和の事だって好きだ。……そういう好きじゃ、駄目なのかな」
姫神は、当惑するよりも、上条の普段と違う雰囲気を感じて、それに心を傾けていた。
「寂しいなんていうと贅沢かもしれないけどさ、もっと、バカやってたいだけだったんだけどな」
喪失感。上条が覚えているのはそれだった。気まずくなって、会えない友達が急に増えた。
みんな、好きの意味を変容させた挙句、今までの距離を保てなくなった。
男と女は、難しい。友達でいるというのは、同性なら簡単なことなのに。
上条の言うことがわかって、不思議とこの瞬間は姫神は嫉妬を抱かなかった。
ぎゅっと、抱きしめ返す。
「秋沙」
「なあに?」
「キスして良いか」
「うん。してください」
吹寄が魅力的な女の子であったことなど、姫神は当然知っている。
美琴も五和も、きっといい子だろう。雲川はどうか知らないが、嫌な人間ではないのだろう。
上条と縁のあった女の子の中で、自分が女として突出していたとは、思わない。
けど。好きになってもらったのは自分だし、上条は結局、自分だけを選んでくれた。
ちゅ、と唇が触れ合う。その仕草はもう、随分と慣れ始めていた。
他のカップルがどうか、上条が他の女の子とするならどうなるのか、そんなのは知らない。
自分と上条のキスの形が、ちゃんと出来上がりつつあった。
「当麻君。一番好きな人は。誰?」
切実な響きではなかった。
もう、なんて答えてもらえるかに不安がないから。
上条はそれを見て、なんだか、姫神に惚れ直した気がした。
「一番はさっき挙げた誰かかな」
「え?」
「秋沙は、特別だ」
恋人を他の女の子と同じランクになんて載せられない。
きっかけというのは、そのドラマティックさとは関係無しに、全て『運命』なのだと上条は思った。
神様に与えられただとか、生まれる前から決まっているという意味ではない。
全ての縁(えにし)は等しくただの偶然であり、だからこそ稀有なのだ。
姫神の優しい顔。
目の前に浮かぶそれは、上条のことを信じてくれる笑顔。
キスをすれば喜んでくれて、抱きしめてやれば安心してくれる。
そういう姫神の反応を喜ぶ自分の気持ちを、好き以外の言葉で表現などできるものか。
「当麻君……ん、あ」
軽く舌を絡めて、もう一度キスをした。
「秋沙。至らないところもあるけどさ、愛想尽かさないで、好きでいてくれ」
「変なの。そういうところが。当麻君を好きになったところなのに」
素朴なそんな姫神の笑顔に、またもう一度、上条はキスをした。
「放課後、時間あるか?」
「うん。当麻君と一緒にいるための時間はとってあるもん」
「じゃあまた、二人っきりで」
「……うん」
期待を込めて、恥ずかしそうに姫神がコクリと頷いた。
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