過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」2
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63: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/03/18(金) 22:13:38.90 ID:3a0E/AJo0


秘匿にされた技術といえば、ミサカ達がクローンだということも当然秘密。

都市伝説として噂にはなっているけれど、それを裏付けるものは残さないように根回しがされている。



ミサカは最初公表すべきだって、思っていた。
それは他のミサカも同様で、皆クローンであることを恥じるように生きたくはないということだった。





けれど、あの人は反対した。


てっきり賛成してくれて、応援だってしてくれるって、そう思ってたからミサカは裏切られたって思った。
あの人はミサカ達が願うなら、何でもかなえようとしてくれる、支えてくれる、そう思い込んでいた。
でも、反対したのはあの人だけじゃなかった。浜面さんやカエルのお医者さん、芳川もだった。


どうして?

クローンっていうことは内緒にしないといけないの?

そんなにミサカ達の生まれ方は間違っているの?


思わずあの人を詰るように憤りをぶつけた。あの人はそれを黙って受け止めた後、一言だけ言った。


『アイツの親達はどォなる?』


美鈴お母様なら気にしないって言ってくれたよと、あの人に食って掛かった。
どうして邪魔をするのだろうかって、まるでミサカ達そのものを否定された気がして、悔しいのと悲しいのがまぜこぜになった。

『クローンの娘を作った親なンて目で見てくるクソ野郎がどンだけいるのかわかってンのか?テメェらが勝手に覚悟を決めるのは勝手だ……だが、ソイツを他の奴等にまで押し付けンな。
 背負える力もねェガキが、不相応な覚悟を語ってンじゃねェ』


頭にかっと血が上って、思い切り言い返そうとしたけど、何も言えなかった。
だって、あの人自身が一番その言葉に打ちのめされた顔をしていたから。
そんな言葉を吐かなきゃいけないことに一番痛みを覚えていたのはあの人だった。


『真実というのはね……何でも曝け出せばいいものではないの。
 口を覆いたくなるような酷い味付けの真実よりも、口当たりの良い誤魔化しが人の心を軽くすることだってあるわ。
 それを大人の欺瞞と言ってしまえばそれまでなのだけれどね』


新体制の学園都市の下で、技術部に就任していた芳川は徹夜続きの隈の色濃くなった目を和らげて笑った。
その笑顔が余りにも悲しそうで、ミサカは何も言えなかった。






ミサカはやっぱり子供だったのだ。

そしてあの人は、気が付けばミサカよりもずっとあの人なりの大人というものになりつつあった。

一緒に歩いていたと、そう思っていたのにどうしてだろう。

その時のミサカには理由がわからなかった。
理由がわからなくて、ただ無性にあの人に置いてかれたような気がした。
そのことが、ただただ悲しくて寂しかった。


ミサカ一人子供のままなんて嫌だった。




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