過去ログ - 紬「タックマン?」
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/03/17(木) 04:22:58.24 ID:LjwDMhJO0
数週間後 日本 桜が丘

澪(相変わらず、タックマンが出たという情報はそこらに転がってても、直接お目にかかれはしないな)

あれから数週間。タックマンは何度も出現し、犯罪者を倒し続けていた。誰一人として殺していない。
情報によると、タックマンは基本的に素手だそうだ。素手でナイフや拳銃を持った相手と戦って勝つのだから、ただのヒーロー気取りではない。相当な力の持ち主だろう。
澪はタックマンが"変異種"なのではないかとも推測していた。
変異種とは、最近噂になっている、突然変異した人類のことである。政府や科学者は存在を否定しているが、記者をしている澪にとってはなじみの薄い言葉ではない。
噂の多くでは変異種は常人よりも遥かに高い身体能力と頭脳を備え、それに加えて特殊な能力を有しているそうだ。
鈴木純を取材したときも、変異種と思われる犯罪者の話を聞いた。目から光線を出したとか。あまりにもファンタジーで、にわかには信じがたいが。
だがそれが事実だとすれば、タックマンも変異種である可能性が高い。光線を防いだそうだし、誰もがタックマンの身体能力は人間の域を出ていると証言している。

澪(タックマンなんてのはくだらないと思ってたけど、変異種の情報を記事にできたら……)

澪は記者としてもカメラマンとしても新米で低く見られている。だが、変異種のようなインパクトのある存在を明らかにできれば編集部内の地位もあがるだろう。
我ながら小さいことを気にすると思ったが、別に澪にとってヒーローが街をまもるだの犯罪だのはあまり重要ではない。
ようは良い記事を書いて給料をもらえればそれでいい。タックマン自体や変異種自体が世界をどう変えるかには興味はないのだ。

澪「ふぅ……」

街を適当に歩いてタックマンの目撃情報を聞いてみるが、特に有用な情報は得られない。

澪(そういえば、街で知らない人に話しかけるなんて、昔は考えられなかったな)

昔の澪は恥ずかしがりやで、知らない人には絶対に話しかけることなんてできなかった。
大人になったのだろうか。成長したのだろうか。いや、どちらも違う気がする。
きっと何かが欠けてしまったのだ。何か大切なものを失ったから、今の自分は空っぽで。
そんな空っぽな人間を、この時代は大人と呼ぶのだろう。


――私も、大人になったら、大人になるのかな。


誰かの声が、響いた。とても透き通った歌声が、空の奥から響いてきたみたいに。

澪「唯――」

――そういえば。澪は思い出す。
今日は唯……日本の歌姫『平沢 唯』のライブイベントだった。この桜が丘でだ。
その取材に行はずの同僚に連絡をとる。なにか強い力がそうさせているように。
唯のライブをなんだか見たくなった。彼女がデビューしてからテレビでその姿を見るたびにテレビを消してきた。何故かはわからない。
嫉妬していたのかもしれないし、そうではないかもしれない。どちらにせよ、今無性に唯の姿が見たかった。


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