29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/03/17(木) 04:31:06.21 ID:LjwDMhJO0
梓「え……」
紬「私は、もう放課後ティータイムにいることを幸せに感じる人間じゃなくなってしまった。だからいてはいけない」
梓「何、言ってるんです」
紬「今日はね、お別れを言いに来たの」
梓「おかしいです、そんなの……」
紬「おかしいわよね。私も、おかしいと思う。だけど、私は壊れてしまった。撃ち出された銃弾は、もう元には戻らない」
梓「まだ、皆待ってます。みんなのところに帰りましょう。私も、一緒に……」
紬「もし、自分を偽ってみんなの元に戻ったとしても、私の笑顔は本物ではなくなるわ。空っぽになってしまう。空っぽの笑顔で接されるみんなの気持ち、考えられる? 梓ちゃんは、耐えられる?」
梓「なんで、そんな意地悪いうんですか……? ムギ先輩は、優しい人なのに……」
梓は泣いていた。その涙をぬぐう者は、いない。
梓「嘘だって良いじゃないですか。嘘でも。ムギ先輩が居なくなるよりましです。ムギ先輩がいないくらいなら、嘘の世界でも、夢でも良い。私は一緒が良いです」
紬「ごめんね、梓ちゃん」
紬はそっと梓を抱きしめる。
梓「ほら、ムギ先輩、暖かいじゃないですか……。やっぱり、ムギ先輩はムギ先輩なんです。私の知ってる、優しくて、あったかい、ムギ先輩のままじゃないですか……」
紬「梓ちゃん……」
はちみつ色の 午後が過ぎてく Honey sweet tea time はちみつ色の 午後が過ぎてく Honey sweet tea time
梓「ムギ先輩……」
ムギは歌っていた。いつもと同じ、優しい歌声で。本当は誰よりも歌が上手いムギ。本当は誰よりも才能のあるムギ。それでも前に出ず、皆の後ろで控えめに笑っていたムギ。
そんなムギが、初めて独りで弾き語りをした歌。
ムギの優しい体温に包まれながら、梓の身体に歌がしみこんでいた。はちみつが紅茶に溶けていくように。
紬「梓ちゃん。本当はね。別の曲を贈ろうと思っていたの。だけど、梓ちゃんの顔をみていると、やっぱりその資格は私にはないなって、そう思ったわ」
梓「……絶対に、帰ってきてください」
紬「その約束は、できないわ」
梓「またここで、今度は、その新曲、聞かせて欲しいです……。約束です」
紬「……約束はできないと言ったはずだけれど……。覚えてはおくわ」
紬は梓に背を向け、音楽室の扉を開く。
梓「ムギ先輩。どこに行くんですか?」
紬「戦いに行くの」
梓「何と戦うんですか?」
紬「私の許せないもの、全てと」
236Res/350.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。