過去ログ - 紬「タックマン?」
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95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[sage saga]
2011/03/22(火) 05:30:14.67 ID:A0O8EXjso
日本 琴吹邸 書斎


扉を開けた先は、埃の舞う薄暗い部屋だった。斉藤もメイド達も一度も入ったことが無いらしい。

紬「ここが、お父様の書斎」

並んだ本棚の中に本がぎっしりと入っている。経営学など、会社に関係するものもあれば純粋な学術研究の本など様々だ。
が、その奥にタイトルの書かれていない本をいくつか見つけた。
手にとって開く。

紬「これは……変異種についての資料だわ。お父様は、ここで一体何を……?」

父の会社の仕事はうっすらと把握はしていたつもりだったが、変異種に関する何かをしていたという覚えない。
単に知識を得たかったのだろうか。
部屋の端に、机があった。紬は椅子に腰掛け、机に載せられたライトを付ける。
机の上には、一冊の本が――日記が、置かれていた。

紬「お父様の、日記?」

ぱらぱらと捲る。父が日記を書いているということは聞いたことがあったが、実物は見たことがなかった。
日付を見ると、死ぬまでの一年間を書き記した最新の日記だ。
ページを捲り、最後の日、父が殺されるあの日に到達した。


"3月×日
明日、紬の卒業式だ。紬もついに大学へ行くそうだ。友達もみんな同じ大学に卒業したの、と嬉しそうな顔で話してくれた。
今夜、紬と食事に行く約束をしている。私は、今晩、たくさんのことを紬に話してあげるつもりだ。
いままで、私はたくさんの過ちを犯してきた。そのことを紬に隠し続けた。紬はもう大人だ。知る権利がある。
何から話せばいいのか、日記に書いて整理してみようと思う。話すことはたくさんある。
そうだ、私が親友を裏切ってしまったことからにすべきだろう。

私には親友がいた。互いをとても大切に思っていて、ずっと一緒に輝いていこうと誓い合った仲間が。
彼が変異種だという事実を知った時、私はショックを受けた。だが、そんなことは気にしないと友達であり続けた。
彼は喜んだ。私が受け入れてくれたと思ったからだ。だが、それは間違いだった。私の弱い心は、変異種を受け入れるには足りなかった。
私は彼を『救うため』に変異種の研究をした。会社を使い作り上げたその機械は、『変異種の波動を吸収し、因子を無効化する』ものだった。
つまり、私は変異種を普通の人間に戻そうとしたのである。それが救いだと。
だが、その考えは間違っていた。私が彼に『もう安心だ、君の病気は治る』といったとき、彼は言った。『俺は病気じゃない!』と。
そうして彼は私の前から姿を消した。数日後私の耳に飛び込んできたのは、彼が自殺したというニュースだった。
そうだ。変異種は病気じゃない。私は根本的に間違っていたんだ。
私は人々を守ろうとした。だが、心のどこかで変異種をその中から除外していた。それが私の弱さだった。
私は私と『同じ』弱い人々と群れて、そこからあぶれたものを迫害する。正義という言葉を盾にして。
私は心が醜かった。人々は私を人格者と今でこそ称える。だが、昔も今も同じだ、臆病で卑怯な私こそが、本当の姿なんだ。

そんな私の本当の姿を、紬にも知ってほしい。
紬なら、きっと別の道を選ぶことができる。あの子は誰よりも優しい。きっと、この世界を優しさで包みこむことができる。
そして強い。紬はどんなことがあっても、絆を捨てたりはしない。『絆をつむぐ』。それがあの子の名だ。
あの子ならば、乗り越えられるだろう。どんな困難も、仲間と共に。
明日、全てを話し、紬に軽蔑されてもかまわない。いや、紬は私を軽蔑したりしないだろう。
紬の優しさならば、きっと私の心すら救ってくれる。
救われる価値のない私をもきっと、その優しさで……"



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