32: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/03/24(木) 20:08:38.95 ID:FFZDvRtY0
「……弾が無くなっちゃった……。弾が無くなっちゃったよぉ……!」
憎い相手を殺せない悔しさ。自分勝手な行動が不可抗力によってやめざるを得なくなったことによる安堵感。
こんな自分に命を差し出した梓に対する劣等感。そのすべてが憂の体を地に崩れさせ、目からは涙を零させる。
「憂……、もうやめよう? こんな切ないことはさ……」
「お姉ちゃん……。私……!」
抱き寄せてくれる唯の胸に顔をうずめて、憂は泣くしかなかった。
「わかってる。でも、こんなのは悲しいだけでしょ……?」
「……うわああああぁ!」
泣きじゃくる憂を、唯はただ優しく抱きしめて慰めた。
「はぁ……、あ……」
梓も糸が切れた人形のようにくず折れて、憂が捨てた拳銃を見つめた。
「大丈夫……?」
和が居た堪れなくなって梓に駆け寄る。
「大丈夫ですから」
わずかに震える体を何とか立ちあがらせ、梓は一息ついた。
「その、すまなかったな……」
「いいんです、律さん。元々私達が蒔いた種です。あなた達を巻き込んでしまってすまないと思っています……」
「そんな……。梓がいなかったら私達は今頃……」
律は想像するだけでぞっとした。
「本当なら、こういう風にみなさんに憎まれて当然な存在なんですよね。戦いを持ちこまれて被害を受けているんですから……」
「でも、梓だって不本意で巻き込まれたんだろ? お互い様さ」
「そう言ってくれると、ありがたいです」
微笑む梓だが、その声は罪悪感によって重く震えていた。
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