57: ◆INjIt6nmxE[sage]
2011/04/03(日) 18:39:02.24 ID:qvWccMNp0
「まさか、私を庇って……!?」
「おい、しっかりしろ! 敵はまだいるんだ!」
コスモが怒鳴るが、唯はモニターにかじりついて必死に梓のギラン・ドゥを見つめていた。
「コックピットはやられちゃいない! 気をしっかり持て!」
戦闘の光や振動が、唯の体を強引に揺さぶる。
「戦わないと、あいつがやられるぞ! それでもいいのか!」
「……っ!」
かたかたと鳴る歯を抑え、心臓がどくどくと跳ねまわる音を聞きながらシートに座りなおす。
唯は涙を振りらうと、レバーを握り目の前の重機動メカを睨んだ。
「……うああああぁ!」
唯の叫びに呼応するかのようにゲージが光り輝き、全てが重なった時、急にコックピットが震えだす。
「うおぁ! これ、大丈夫なんだろうな!」
勇ましく出てきた律でも、この不可解な現象には畏縮してしまった。澪も必死にレバーを握り、揺れに投げ出されない様に踏ん張ることしかできなかった。
「パワーがあがっているんじゃないのか!?」
「そんなの、わかるもんか!」
律が怒鳴るが、それも大きなうねりの中では蚊の鳴き声にしかならない。
エネルギーは止まるところを知らず、イデオンは咆哮をあげる。
それと同時に体中から光が走り、周りへ拡散してイデオンはオレンジ色の光に包まれる。
イデオンの瞳には、奇妙な流れと模様が次々と浮かんでは消えていく。
「せ、先生……!」
「空を飛んでいる……!」
さわ子が下を覗くと地上がどんどん離れていき、イデオンは敵を引き連れて空へと上がっていく。
「……よくも、あずにゃんを……」
空へ飛んでいくイデオンは、さらに輝きを増して周りの敵を怯えさせる。
「あずにゃんをいじめたなあああぁ!」
オオオォ……ン!
唯の叫びはイデオンと共鳴し、それは激しい唸りを起こして周りへとび散っていく。
バシュウウウウウウゥ!
イデオンの体中から光の束が伸び、辺りにいた敵機を次々と炎の中へと叩きこむ。
激しい空気の渦の中、イデオンは瞳に煌びやかな模様を描き出しあたかも意思があるかのように咆哮をあげた。
「はぁ……、はぁ……!」
空から爆発の光が失せて、イデオンはゆっくりと降下を始めた。
「こんなのまであるのか? この遺跡……」
イデオンから放たれた光跡を見つめて、コスモは戦慄した。
「……見ろ、撤退していくぞ!」
コスモが指差す先に、戦闘機が次々と遠くなっていくのが見えた。
「そうです、か……」
それを見届けて、唯は深くため息をついて糸の切れた人形のように座席に沈みこんだ。
186Res/213.94 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。