過去ログ - 一方通行「俺が一生オマエの面倒見てやる」番外個体「……うん」
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943: ◆jPpg5.obl6[saga]
2011/08/16(火) 21:56:26.27 ID:rSukkoHc0



そこから先はよく覚えていなかった。記憶の一部が欠け落ちてしまったかのような感覚を味わいながら、か細い呼吸を
繰り返している滝壺の身体を抱きしめて、何度も何度も叫んでいたらしい。
必死に止血を試みたが、それを嘲笑うかのように血の流れは激しく、ただ彼女の意識を繋ぎ止めるべく呼び掛けること
しかできなかった。

前方で凄まじい轟音が鳴り響いた。完全にブチ切れた麦野の罵声も一緒に。
しかし、そちらに気を向けている余裕は無かった。

絹旗がいち早く冷静に応急処置を施した後、とにかく夢中で車を飛ばした。救急車が間に合うとは到底思えなかった。

一刻を争う事態なのは誰しもが理解できる。悠長に救急車の到着を待っている猶予すら厳しい状態の滝壺を乗せた車は
夜の学園都市を爆走した。後部座席で横たわる滝壺の血色は死人に近く、刻一刻と命を削られているのが判る。
そんな危険な状態の滝壺を、迅速に暴れ終えた麦野と絹旗が懸命に看護してくれている。
チラチラとその様子を確認しつつ、浜面はただ『間に合ってくれ!』とだけ願い続けた。
ハンドルを握る手に力がこもる。小刻みな震えが治まらない。思考回路が正常に働いていない。
悪条件ばかりが重なる中、アクセルを強く踏み続けながら、浜面は彼女の息が途絶えてしまわないよう祈った。


助けを求めた先は、唯一道順を知っている過去に何度か世話にもなったあの『冥土帰し』の勤めている病院。
今も時折思うが、あんな精神状態で良くまともに辿り着けたものだ。火事場の馬鹿力というのはつくづく凄い。

手術自体は、無事に成功した。
腹部に受けた傷も冥土帰しが綺麗に塞いでくれた。輸血も支障なく施され、彼女の身体に残っていた弾も摘出され、
何とか峠は越えたとのことだ。
手放しで喜んだのを憶えている。頑張ってこの世に留まり続けてくれた彼女に胸を撫で下ろしながら、ひたすら労いの
言葉を送った。



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