過去ログ - 火憐「兄ちゃん、あんま無茶ばっかすんなよな」
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157: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:05:05.69 ID:SKmS+kSP0
 月火の事は気になるけれど、その身と心への懸念は尽きないけれど、その不安と焦燥と心配は、無理やりにでも抑え込む。
動揺が消えたわけでも、慟哭が止んだわけでもないけれど。
それでも、今にも爆発しそうなこの心は、ただ事態の解決にだけ、全力でぶつけよう。
たとえ、その後に、どうなろうとも。
これ以上に事態を悪化させることだけは、何としても、何に代えても、防がなければならない。
以下略



158: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:11:57.24 ID:SKmS+kSP0
「お前様! 下じゃ!」
「!」

 本当に何の前触れもなかった。
どこかに隠れているかもしれないという意識の、外からではなく、内からの衝撃。
以下略



159: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:18:33.51 ID:SKmS+kSP0
 飛び上がったその何者かは、一瞬の浮遊の後、僕の体を屋上へと投げ捨てた。
抗う間もなく、コンクリートに叩きつけられる感触。
鋭い痛みが全身を走ると同時、肺から空気が追い出される。
そんな体と床が上げる軋みが、五感の全てに余すことなく伝わってきた。

以下略



160: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:22:13.95 ID:SKmS+kSP0
 あの瞬間――襲撃された時にこの目が捉えた映像を信じるならば、こいつは建物の影に潜んでいたのだ。
加えて先程の、人間離れした膂力。
そんなことが可能な存在を、そんなものを有している存在を、僕は確かによく知っている。
誰より何より身近に知っている。
それは、あるいはその気になれば、状況さえ整えば、きっと僕だって出来るようになることなのだから。
以下略



161: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:26:06.55 ID:SKmS+kSP0
 だがしかし、それがどうしたというのか。
少なくともこいつを倒さないと、僕は月火を助けられない。
ならば、怖気づく理由も臆する道理もないだろう。
知り合いでないのならば、尚好都合だ。

以下略



162: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:30:15.16 ID:SKmS+kSP0
 だけど戦い始めてすぐに、自分と相手の間に、想像以上に決定的な実力差があることを理解しないわけにはいかなかった。
僕の拳が一度届く間に、相手の拳は数回僕の体を抉り。
僕の蹴りが一度も当たらないのに、相手の蹴りは僕の体を幾度も貫き。
僕が掴んでも容易にいなされるのに、相手に掴まれれば確実に床に叩きつけられていた。

以下略



163: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:35:20.76 ID:SKmS+kSP0
 今の吸血鬼度を上げた状態でなかったら、最初の一撃で戦闘不能になっていただろう。
けれど現状とて、回復するなりまた潰され、潰されるなりまた回復するという無慈悲な繰り返しでしかない。
止め処ない破壊と再生の連鎖に、苦痛を覚えることすら叶わない。
拳を交わすなんて、とても口にできない程の、それは一方的な殺戮だった。

以下略



164: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:39:32.32 ID:SKmS+kSP0
 もっとも、今の僕の状況で、こんな分析には何の意味もない。
これは、戦力差を把握する為のものでも、勝機を見出す為のものでもない。
只の確認だ。確認であり、確信だ。

 こいつは確かに強い。
以下略



165: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:44:22.02 ID:SKmS+kSP0
 否、断じていい訳がない。
誰がいいと言ったって、僕が絶対に認めない。

 僕は月火を危険に巻き込んでしまって、故にこそ自分を一番に許せなくて。
しかしだからといって、犯人であるこいつを許すつもりもまた、断じてないのだ。
以下略



166: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/27(日) 22:48:43.34 ID:SKmS+kSP0
「うああああああああああああああああああああああああ!」

 攻撃一辺倒だったところを、突然顔を掴まれたせいなのか、一瞬相手の体が硬直する。
その辺りもアマチュア故の反応なのだろうか。
プロならば、こんな隙は絶対に見せてくれないだろう。
以下略



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