過去ログ - 火憐「兄ちゃん、あんま無茶ばっかすんなよな」
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185: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:21:59.48 ID:24bZVFNg0
 抑揚もない淡々としたその声は、いっそ荒げる以上に悲痛を感じさせた。
ただもう、そんな感情をすら失くしてしまっただけなのだろう事が、容易に窺い知れてしまうのだから。

 痛い程に、苦しい程に、悲しい程に、伝わってくる。
皆を――もし僕が皆を、それも自分のせいで失うことになったりすれば。
以下略



186: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:27:24.06 ID:24bZVFNg0
「僕のせいで、あいつらは全てを失った――だから僕は決めたんだ。この命の続く限り、あいつらを救い続けるって」

 世界は無数に存在し、ほんの些細な事で、また新しい世界が生まれてゆく――そんな話を思い出す。
だからこいつは、その数多の世界を渡り歩いて、その全ての世界で、同じことが起きないようにしようと考えたのだろう。
阿良々木暦のせいで――阿良々木暦が窮地に陥るせいで、大切な存在を失うことになるという可能性を、一つでも多く潰す為に。
以下略



187: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:34:32.65 ID:24bZVFNg0
 015.

「これからどうするんだ?」
「決まってる。また別の世界で同じことを繰り返すだけだよ」

以下略



188: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:39:27.53 ID:24bZVFNg0
 確かにそうかもしれない。
というよりも、きっともうこいつは、本来の元いた世界に戻ることはできないのだと思う。
そもそも戻りたいとも思っていないだろう。

 だって元いた世界には、何も、誰も、待っていてはくれないのだから。
以下略



189: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:45:56.19 ID:24bZVFNg0
 と、それまで黙っていた忍が、彼に寄り添うように立つ別世界の自分に向けて問いかけた。
不遜な態度は変わらないが、その表情は幾分穏やかで。
答えは聞かなくても分かっているけれど、形式的に聞くだけ聞いておいた、という感じだ。

「言うまでもなかろう」
以下略



190: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:51:40.45 ID:24bZVFNg0
「しかし、どうやって次の世界に行くんじゃ? 相当のエネルギーが必要になるはずじゃが」
「知れたことよ。力ある、悪意ある怪異は、それこそ無数におるからのう」

 それ以上何も言わなかったけれど。
きっとそれは、未来で僕や皆を窮地に陥れることになるかもしれない、そんな存在を指して言ったのだろう。
以下略



191: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:54:20.33 ID:24bZVFNg0
 016.

 その後、忍は黙って影にその身を沈めて。僕はそれを見届けてから、改めて月火の前に戻った。
傍に腰を下ろして、その顔をよく見れば、本当にただ眠っているだけのようだ。
その事実を確認して、ようやく一息つく。
以下略



192: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:58:32.90 ID:24bZVFNg0
 もし今回の犯人が違っていれば。
もしそれが別世界から来た僕達でなかったならば。
あるいはそんな世界もあるのかも、あったのかもしれないと。
そう思うだけで怖気が走るけれど。
ここはそんな世界とは違うし、何より僕が違わなければならない。
以下略



193: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:02:07.63 ID:QNTrEY900
「……」
「……おい」

 しばらく後、痺れを切らしたのは、僕じゃなくて月火の方だった。
気付けば、薄らと開けた目でこちらの様子を窺っている。
以下略



194: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:06:14.72 ID:QNTrEY900
 一転、こちらを睨むようにしつつの難しい表情。
目を開けたはいいけれど、やはり身を起こすつもりはないらしい。
何が不満なのかってまあ、目を覚ましたらこんな廃墟で転がされてましたとあれば、それは不満だらけだろうけどさ。
だからもう、さっさと起きてとっとと帰ってぱっぱとベッドに入ってしまえば、それで良かろうに。

以下略



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