過去ログ - 火憐「兄ちゃん、あんま無茶ばっかすんなよな」
1- 20
188: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:39:27.53 ID:24bZVFNg0
 確かにそうかもしれない。
というよりも、きっともうこいつは、本来の元いた世界に戻ることはできないのだと思う。
そもそも戻りたいとも思っていないだろう。

 だって元いた世界には、何も、誰も、待っていてはくれないのだから。
以下略



189: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:45:56.19 ID:24bZVFNg0
 と、それまで黙っていた忍が、彼に寄り添うように立つ別世界の自分に向けて問いかけた。
不遜な態度は変わらないが、その表情は幾分穏やかで。
答えは聞かなくても分かっているけれど、形式的に聞くだけ聞いておいた、という感じだ。

「言うまでもなかろう」
以下略



190: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:51:40.45 ID:24bZVFNg0
「しかし、どうやって次の世界に行くんじゃ? 相当のエネルギーが必要になるはずじゃが」
「知れたことよ。力ある、悪意ある怪異は、それこそ無数におるからのう」

 それ以上何も言わなかったけれど。
きっとそれは、未来で僕や皆を窮地に陥れることになるかもしれない、そんな存在を指して言ったのだろう。
以下略



191: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:54:20.33 ID:24bZVFNg0
 016.

 その後、忍は黙って影にその身を沈めて。僕はそれを見届けてから、改めて月火の前に戻った。
傍に腰を下ろして、その顔をよく見れば、本当にただ眠っているだけのようだ。
その事実を確認して、ようやく一息つく。
以下略



192: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/29(火) 23:58:32.90 ID:24bZVFNg0
 もし今回の犯人が違っていれば。
もしそれが別世界から来た僕達でなかったならば。
あるいはそんな世界もあるのかも、あったのかもしれないと。
そう思うだけで怖気が走るけれど。
ここはそんな世界とは違うし、何より僕が違わなければならない。
以下略



193: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:02:07.63 ID:QNTrEY900
「……」
「……おい」

 しばらく後、痺れを切らしたのは、僕じゃなくて月火の方だった。
気付けば、薄らと開けた目でこちらの様子を窺っている。
以下略



194: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:06:14.72 ID:QNTrEY900
 一転、こちらを睨むようにしつつの難しい表情。
目を開けたはいいけれど、やはり身を起こすつもりはないらしい。
何が不満なのかってまあ、目を覚ましたらこんな廃墟で転がされてましたとあれば、それは不満だらけだろうけどさ。
だからもう、さっさと起きてとっとと帰ってぱっぱとベッドに入ってしまえば、それで良かろうに。

以下略



195: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:10:16.37 ID:QNTrEY900
「もー、ごちゃごちゃうるさいなあ。助けにきたんだったら、ちゃんとそのシーンではそれらしく振舞ってよね。刺すよ?」
「だから何で助けられる側がそんなにアグレッシブなんだよ」

 そら見たことかと言おうか、相も変わらず攻撃的な言葉。
全く、どんなドラマでどんなヒロインなのか。そんなものを月9枠で放送されては堪ったものではない。
以下略



196: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:14:11.00 ID:QNTrEY900
「お兄ちゃんが何考えてんのか分かんないけどさ、ちゃんと私に、助かったんだって、そう実感させてよ」
「そうかい、じゃあ……」

 拗ねたような声に、甘えたような表情に、決して屈したわけではないけれど。
展開的にそうしないと場面が切り替わらないんだろうと解釈して、寝ている体を抱き起こすようにして、望み通りハグしてやった。
以下略



197: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:17:12.78 ID:QNTrEY900
 この温もりを――あの僕は、失った。
この優しさを――あの僕は、失った。
永遠に、延々と、失って、失った。
その心情を、僕には正確に察する事はできない。
できない以上に、できてはならないのだ。
以下略



198: ◆/op1LdelRE[saga]
2011/03/30(水) 00:18:14.97 ID:QNTrEY900
「お兄ちゃん、あんまり無茶ばっかりしないでよね」



241Res/178.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice