過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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254: ◆lI.F30NTlM[sage saga]
2011/04/02(土) 01:14:11.23 ID:i1LYuYF3o
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美しく、華やかなホールは、もう存在しなかった。
土煙が舞い、あちこちに瓦礫が転がり、名残すら残らないほど、このホールは破壊され尽くした。
天井もすでに無く、柔らかな月光がこの闇を払おうと懸命に光り続けている。
そんな瓦礫に埋もれた場所に、少女が二人。
ドレスはあちこちが破れ、体は傷だらけ、ところどころ出血している無残な姿の少女達。

「やった……の?」
「どうかしら……」

二人の少女――――桐乃と黒猫は、同じ場所を見ていた。先程まで、あの悪魔が立っていた場所だ。
今は土煙のせいで何も見えないが、もし生きていたときのために戦闘態勢だけは取っている。
だが、もし生きていたら彼女達に勝機は無い。
満身創痍、疲労困憊、おまけに魔力はほぼ使い切った。はっきり言えば、逃げる事だってままならない状態なのだ。
あの悪魔の死を祈りながら、二人は見つめ続ける。
不意に、夜風が吹いた。
土煙は払われ、視界がクリアになる。月光が、この場を照らす。
そして、二人は見た。あの悪魔の姿を。
いや、『悪魔』と呼ぶべきなのだろうか。
視線の先には、ボロボロの茶色いドレスを纏い、腹に大きな風穴を空け、その穴と口から大量に血を流している、眼鏡を掛けた地味な短髪の少女の姿しかなかったからだ。
その少女もまた、二人を見つめていた。
地味な少女――――麻奈実は、静かに笑った。

「っ!」

桐乃と黒猫が身構える。
だが、麻奈実は何もしてこない。ただ、笑っているだけだった。
……十数秒後、ようやく口を開く。

「負けちゃったか」

口の中をゴポゴポと鳴らしながら、そう呟いた。
そして、両手を広げて月を仰ぐ。月光を体全体に浴びせるかのような姿勢。
その麻奈実の体を、地面から伸びたコールタールの鞭が締め上げた。

「もうお迎えかぁ。せっかちだなぁ〜」

異様な光景を前に、驚く桐乃と黒猫。
一方、麻奈実は驚いた素振りも無い。こうなることは知っていた、そんな態度であった。
コールタールで出来た鞭は麻奈実の体を引っ張る。地面の中へ、地面の中へと。

「桐乃ちゃん。黒猫さん。お別れ、だね」

体が半分まで埋まった麻奈実は、相変わらずとぼけた調子で言い放った。
笑みを浮かべて、いつものように、別れを告げる。

「それじゃ、『永遠』にさようなら」

それが、田村麻奈実の最後の言葉だった。
悪魔との契約。それには当然、リスクが伴う。
強大な力を得る代わりに、死後、その魂は悪魔に奪われ、永遠の闇を彷徨う。
あの光景は、麻奈実の魂が悪魔に奪われる場面だったのだろう。
脅威が去り、桐乃は大きく息を吐いた。


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