過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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33: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/03/27(日) 16:41:11.13 ID:4SRjOM3Xo
 
「この公園の桜も、もうしばらく経たなきゃ見頃になんねえなぁ。
 ……本当に、今日はごめんな。もうちっと咲いててくれてもいいじゃんかなぁ」
「わたしは、このくらい咲いている方が好きですよ。
 だって、桜って満開になるとすぐに散ってしまうじゃないですか。
 桜が散る時って、とてもきれいなんですけど、何だか寂しい気もします」

桜の花が嫌いだという人を俺は知らない。
花が散って、道路に散乱している様子はあまり見られたもんじゃないが、
一気に花開いて潔く散る桜は、人々の心の琴線に触れる不思議な力を秘めている。

「お兄さん、桜の花を一輪だけ摘んでもらえますか?」

あやせがふと何かを思い付いたように、桜の木を見上げながら言った。
咲いているとは言っても、やっと今週辺りから咲き始めたばかりだ。
決して満開の桜から受けるような、誰をも魅了する華やかさなんて感じられない。
むしろ、弱々しく儚げな印象すら感じられた。

「まだ咲き始めたばっかだし、もう少し待てばもっときれいに咲くぜ」
「わたしも、今摘んでしまうのは可愛そうだって思っています。
 でも、わたしには、今この場に咲いている桜じゃないと意味がないんです」

何かを思い詰めたようなあやせに気圧されて俺は立ち上がると、
手近な枝から、ようやく咲き掛けた桜の花を摘み、あやせの手のひらに載せてやった。
もう一日待っていれば、翌朝には完全に開花したであろうその花びらを見て、
可愛そうなことをしちまったかなと、少しだけ後悔した。
でも、今のあやせには満開の桜よりも、この方が似合っているのかも知れん。

「わたし、この桜の花で押し花を作ろうと思います。
 押し花にすれば、ずっとこのまま、いつまでも変わらない姿で残せるから。
 ……お兄さんは初恋なんて、いつか想い出に変わってしまうって言いますけど、
 この桜の花を見るたびに、わたしは今日のことを想い出します」


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