過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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421: ◆lI.F30NTlM[sage saga]
2011/04/10(日) 21:55:45.16 ID:UPURqhJ/o
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「いらっしゃいませ〜」

俺達が入ったのは、昔懐かしい雰囲気を色濃く残している老舗の定食屋だ。
老年の店主夫婦が切り盛りしている店で、以前桐乃と訪れたケーキショップのような華やかさはない。
そのせいか、店内にいたのは休日なのにスーツ姿のサラリーマンが数人。俺と同い年くらいの男連中が二グループ。女の子は一人もいなかった。
空いているテーブル席に座ると、頭には白い手拭いを巻き、綺麗に洗濯された割烹着を着た六十代ぐらいの女性が水を持ってきてくれた。ここの店主の奥さんだ。

「あの、ここは?」
「定食屋っていう、少し前の日本では割とポピュラーだった飲食店だよ」
「へぇ〜」

こういった場所は珍しいのか、ブリジットは店内の色んなところを眺めていた。
俺は壁に掛かった品書きを眺め、何を食べようか考えていた。

「ブリジットちゃんは、日本語読めたよね?」
「はい。むずかしいものでなければ、だいたいは読めますよ」
「じゃ、あの壁に掛かっているメニューから、頼むものを選んでね」
「え? あ、あれがメニューなんですか? わたし、ああいうのははじめて見ました」

最近の飲食店では、各テーブルにメニューが備え付けられているのが一般的だ。写真付きで非常に見やすいのだが、俺はこういうのも悪くないと思っている。
ブリジットもそういう店にしか行ったことがないのだろう。「ふわぁ」なんて言いながら、品書きを眺めていた。

「お兄さん。わたし、エビフライ定食にしようと思います」
「わかった。じゃ、頼むかね。すいませーん!」
「はいはーい。ちょっと待っててくださいねー」

俺は大きな声で奥さんを呼んだ。
程無くして、厨房にいた奥さんは、片手にメモを握ってぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。

「お待たせしましたー。ご注文は?」
「チキンカツ定食、ご飯大盛りで。あとエビフライ定食を」
「はいはい。チキンのご飯大盛りとエビフライ。ひとつずつね?」
「はい」
「じゃ、ちょっと待っててね」

注文を聞き終えた奥さんは、厨房に向かった。そこで、ブリジットから声が掛かる。

「あの、お兄さんはこのお店によく来るんですか?」
「そんなことはないよ。友達と何回か来たことがあるくらいだし」

注文した品が持ってこられるまでの間、俺とブリジットは他愛のない話をして時間を潰した。




「お待たせしましたー。チキンカツ定食のご飯大盛りと、エビフライ定食ね」
「ども」
「ありがとうございます」
「それじゃ、ごゆっくり」

約二十分後、注文した品がテーブルに届けられた。
ブリジットの頼んだエビフライ定食の乗った盆には、スプーンとフォークも置かれている。奥さんの気遣いだろう。

「ふわぁ、たくさんありますね〜」
「食べきれるか?」
「た、多分……」

ここの売りは、安い値段でお腹いっぱいになれるところだ。そのため、常連というと学生連中が多い。
そのことを伝えていなかったため、ブリジットは目の前に置かれた定食の量に圧倒されていた。まあ、デカいエビフライが三本もあるからな。
それに加えて、盆の上にはご飯、味噌汁、お新香。エビフライの周囲にはキャベツの千切り、ポテトサラダ、切られたトマトもあるのだから、驚くのも無理はない。

「とりあえず食べようか」
「そ、そうですね」

俺はテーブルに置かれている筒から箸を抜き、手を合わせた。
ブリジットも同じように手を合わせている。

「いただきます」
「いただきます」

まず手をつけたのは味噌汁だ。油揚げとネギの入った味噌汁は素朴な味がして、それが実に俺好みで美味かった。
次にメインのチキンカツ。揚げたてなので衣はサクサクしており、あらかじめ醤油などで下味が付けられた肉厚の鶏むね肉に、良いアクセントを加えていた。
ブリジットもフォークを手に持ち、エビフライを頬張っている。

「わぁ、美味しいですね」
「安くて美味い。庶民の味方だよ」


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