過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
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53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県)[sage saga]
2011/03/27(日) 22:03:22.37 ID:VzcOF4WKo




俺たちは今、スタジオの脇に設けられた休憩スペースで、並んでエスプレッソを飲んでいる。
撮影の方は、どうやら機材関係でトラブルがあったらしく、今はスタッフが全力で復旧作業中。その間、モデルたちは長めの休憩となった。

「本当にすみませんでした」
「あの、そんなに謝らないでください。それにコレ、美味しいですよ。私もこういうの、色々試してみようかなぁ」

仕事中に別のことを考えて、いつも出来ていることでミスをして、その上慰められている。
はは……、本当に、今日の俺はダメダメだなぁ……。ここまで来ると、自己嫌悪を通り越して笑いが出てくるぜ。
今日はいつもより苦く感じるなぁ、このエスプレッソ。

「高坂さん、どうかされたんですか?」
「へ?」
「その、元気が無さそうに見えたので。私の思い違いなら良いんですけど……」

どうやら、顔や態度に出てしまっていたらしい。いや、女の勘というヤツか?
どちらにせよ、加奈子に話すべきことではない。ここは誤魔化さないと……。

「ええ。プライベートなことで少し悩んでまして。すみません、変に心配させてしまったみたいですね」
「そうですか。私で良ければ、相談に乗りますけど……」
「大丈夫です。大したことじゃないですから」

心配そうに見つめる加奈子に、俺は笑顔で答えた。
嘘を吐いたことは心苦しいが、これは俺の仕事なのだ。俺が四苦八苦する場面であり、彼女に要らぬ心配をかけてはいけない。
ごめんな、加奈子。
俺は心の中で、加奈子に詫びた。

「お待たせしましたー!五分後に撮影を再開しますので、モデルの皆さんは準備をお願いしまーす!」

機材のトラブルが解決したらしく、スタッフがスタジオ全体に聞こえるよう声を張り上げた。
俺はエスプレッソを飲み干し、席を立つ。

「高坂さん」

そこで、俺の背後から加奈子が声を掛けてきたので、首だけ動かして振り向いた。

「あの、あまり無理をしないでくださいね」

加奈子は、未だに心配そうな表情で俺を見ていた。まるで、俺の悩みを知っているかのようだ。
つくづく思う。女というのは、どうして誰も彼も勘がいいのだろうか、と。

「ありがとうございます。でも、大丈夫ですから」

けれど、今の俺に言えるのはそれだけだった。


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