過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.9
1- 20
630:チキンと地味子の急展開[sage saga]
2011/04/25(月) 11:02:00.48 ID:lGAVlfkj0


 ……ああ、薄々は感づいていたさ。
その「すき」は「好き」なんだろうって。
いくら俺でもこの「好き」の言い方を取り違えたりはしない。
これは、Lの次がOの「好き」だろう。

 思えばそういう雰囲気が無かったわけじゃない。
クリスマスを一緒に過ごしたこともあるし、修学旅行や運動会、卒業式なんかも一緒だった。
そんな長い時間を過ごして、いわゆる男女のいい感じな雰囲気がゼロだったなんてことは無い。
なんとなく見つめ合ったり、手が触れたり、そんなことも一度や二度では無かった。

 それでも俺達は、この「幼馴染み」という関係を続けてきた。
この関係は非常に楽だ。お互いを気遣いながらも下心という下衆なモノが一切無い。
打算なしの緩くて暖かい関係、それが俺と麻奈美の全てだった。

 ただ、そんな関係がいつまでも続くとはもちろん思っていない。
いつか二人のどちらかに恋人というものが出来れば、この関係を今まで通りに続けることは不可能だ。
何も気にせず、かつ心配し合う。これは今しか出来ない。
だからこそ、俺達は「幼馴染み」として二人で歩き続けた。

 その二人が、もし「恋人」という関係になってしまったら。
はっきり言おう、俺はそれが怖い。
今までみたいな関係が終わってしまう、なぜだかそんな考えを俺はいつからか持つようになった。
俺のことに関しては勘のいい麻奈美のことだ、きっとこんな俺の考えも気付いているかもしれない。
それでもこいつは何も言わず、ただ俺と「幼馴染み」を続けてくれた。

 ああ、寝起きだからな。こんな変なことを考えちまったのかもしれない。
でも、多分これは正解だ。今の俺の素直な気持ちがこれなんだろう。

 さて、自分の気持ちに気付いたところで、俺は何をすればいいのだろうか。
自覚したばかりだが、俺は相当なチキン野郎だ。
いきなりこの関係を変えることは出来ないだろう。
改めてその麻奈美の顔でも眺めてみるか。

「……すー……」

 うんうん、人の気も知らないで良く眠ってるよコイツ。
なんだろう、なんだか無性に悪戯したくなってきた。もちろんそういうのじゃ無いヤツだぞ。
まずはこの鼻でも……おおっ。

 俺の視線は今、一点で止まっている。
その場所は、麻奈美の唇だ。
なんだかプリッとしていて触ると気持ち良さ……ああ! マズい、意識したら余計にマズいぞ!
……でも、もしこの唇と俺の唇が……うおお! 落ち着け、落ち着くんだ!
一度麻奈美への思いを確認した後にこれは拷問だ。生き地獄と言ってもいい。

 ……ダメだ、もう麻奈美を起こして帰ってから水を頭から被るしか無――、

「きょうちゃん……すきだ……んっ」

 気付いた時には遅かった。目の前に麻奈美の顔がいっぱいに広がっている。
その距離は数センチ、そして唇と唇に至っては――ゼロ。

 ああ、悪いか、悪いよな。俺は寝てる幼馴染みにキスしちまったんだよ。
本当にチキンだな、俺。我慢出来なかったとはいえ、これは無いよな。

 ……悪い、麻奈美。いつか必ずちゃんと言う。それまでこれは秘密にさせてくれ。
そう思いながら俺は、麻奈美の頭の下から左腕を抜き、布団から出た。
寝た状態から座った形に変わり、立ち上がろうとしたその時。
後ろから声が聞こえた。

「きょうちゃん……キスだけでやめちゃうの?」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/717.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice